麦芽比率など | 副原料、その他 | |
ビール | 麦芽比率 (2018年4月から) 50%以上 | 麦、米、とうもろこし、 こうりゃん、ばれいしょ、 でん粉、糖類またはカラメル 【追加副原料】は略 |
発泡酒 | 麦芽比率 25%未満 | 税制上は麦芽比率25~50%の発泡酒 もあるが、税率は25%未満より 高くなるので、 現行の商品としては無い。 |
第3のビール① その他の醸造酒 (発泡性) | 麦芽なし | |
第3のビール② リキュール(発泡性) | 麦芽比率50%未満の発泡酒に 麦スピリッツを加えたもので エキス分が2%以上 |
従って、第3のビールも酵母による発酵で造っている。発酵で生まれるものは再現できない。お酒のなかには発酵によって生まれた、数百~数千に及ぶ複雑なうまみ成分・酸味・芳香成分が含まれている。
タンパク質や微量のビタミン・ミネラルを使って複雑きわまりない香味成分を作るのは生き物の酵母であって、工学的に作り出すことなどできない。
麦芽をまったく使わないとなると、N源(窒素源:タンパク質)が足りないどころではない。麦芽以外の何かのN源から麦芽に近い味を作り出さなければならない。
人の技術はデンプンを自由自在に糖化させるところまで発達した。
問題はN源だ。タンパク質をどこから持ってくればいいのか?
しかも、どの酵母を使えばおいしくできるかはわからず、N源と酵母の組み合わせは無限にあるのだ。
「第3のビール①」は、人間が有史以前から行っていたおいしいお酒造りを分析し、なぜおいしいかを研究しつくし、これに化学の力を加えて作った、まさに「21世紀のお酒」といえるのではないか
発泡酒とスピリッツ、どちらも従来からあるお酒なので、いかにブレンドしてうまいお酒にするかの技術といえる。
素材となる発泡酒に50%まで麦芽を使えること。これは「第3のビール①」より、ビールらしい味を実現するには明らかに有利となる。スピリッツも大麦や小麦を原料に蒸留したものなので、より麦の香りを生かすことができる。
各社の具体的取組・ノウハウが記述されているが紹介は省略します。麦芽を50%程度まで使えるとなれば、今のメーカーは、「ビールとまちがえる」ものを作り出すことができるまで、技術はアップしているのだ。
このジャンルは、銘柄が多い反面、新製品のライフサイクルが短いケースがままある(ヒットしなければ終売)。今度は、発泡酒と「第3のビール①」の市場が徐々に縮小していく。メーカー各社は「第3のビール②」の新ジャンルへ続々と新商品を投入していくことになる。
発泡酒や第3のビールはなぜビールのような味がするのか。その仕組みがおわかりいただけただろうか。
たしかに、どちらもきっかけは日本の酒税がビールにだけ重税を課していることから生まれたものだろう。しかし「ただの安い酒にしない」ために、どれほどの努力が込められているかは想像以上である。そうして生まれた新ジャンルも、売れるとすぐ増税されてしまう。
が、メーカーはそれにクサることなく、麦芽の比率を下げ、もしくは麦芽を使わず、ビールでないおいしいお酒を造ろうとしてきた。繰り返すが、ビールは人間が関与できる工程が非常に少ない。麦が発芽するときに糖化酵素が生まれ、何億、何兆という単位の酵母たちが奏でる自然の営みに、人は本来、関与できず、ただ状況を整えることが限界だった。
経験に頼っていたことを、科学的に理解したことで今日の日本のビール風飲料の隆盛が生まれた。
機能性ビールのいずれもが、今まで説明してきた発泡酒の技術的進化から生まれている。最初、発泡酒は「味」と「安さ」(もちろん税が安いだけ)を求めて作られたが、いかに麦芽を使わずにおいしく作るかを研究するうち、その副産物として「糖質が少ない発泡酒」などが可能になってきたのだ。
基礎的な説明は、既エントリー『炭水化物』は、糖類、糖質、食物繊維。おまけで人工甘味料、お酒のカロリーにあります。糖質が酵母によってアルコールに変われば、それは糖ではなくなる。そして、酵母が食べるためには多糖類を単糖類や二糖類にする必要がある。
ここで糖質をカットするためには2つのアプローチが考えられる。こういった技術革新を通じて、発酵後に残る糖質を極限まで減らしても、お酒としての味を作ることが可能になったのだ。
- そもそも多糖類を減らす(入れない)
スターチを全部、小さな二糖類、単糖類に分解しつくしてしまってから加えると、酵母が食べやすくなり、すべてアルコールになる。- 糖質を食べつくす強力な酵母を使う
酵母によって糖質の分解能カは違う。強力な酵母を使って糖質を残らず発酵させてしまえば、お酒のなかに糖質を残さずにすむはずだ。また酵母によっては、一部の多糖類まで旺盛に食べてくれる種類もある。こういった酵母を使えば、いくらかの多糖類が残っていてもすべてアルコールに変えてくれる。
また酵母選択の自由度が高く、ビールのように伝統にしばられることもない。こうして、ビールではなく発泡酒や「第3のビール」で「糖質オフ」や「糖質カット」の商品が多く実現しているのである。
この「プリン体カット」の技術は各社がまさに競い合っていて、簡単にいえば、絶対に漏らせない企業秘密が非常に多いのだ。なので「糖質カット」に比べて、どうしても「触れる」程度になってしまう。が、当然だがギリギリのところまで聞いてきたのでご容赦いただきたい。
基礎的な説明は、既エントリープリン体とは、尿酸の“2つの顔”、プリン体ゼロのビールは意味がない?にあります。方法は2種類しかない。
- 酵母のストレスをなくす。
まずは、ビールの中にそもそもプリン体が含まれないようにすることだ。ビールのプリン体はどこから来るかといえば、酵母などの細胞が壊れ、ここから細胞核・DNAが出てくるのが最大の原因だ。
そこで、まずは酵母にストレスをかけずに醸造することが重要になる。- 炭でろ過する。
プリン体が少ないビールを造ったあと、プリン体を「ろ過」する。ここで使われるのは……なんと「炭」。キリンも、アサヒも、これらの技術に関してはなかなかくわしく話してはくれないが、両社とも炭を使っていることにまちがいはない。たとえばアサヒビールでは活性炭を使ってろ過している。よく聞く「炭でろ過」とはどのようなものなのか。炭は全体が非常に小さな穴を持っている。だから、冷蔵庫に炭を入れておくと、においの成分がこの小さな穴に入って据えられると、それが再び出てこない、というわけ。ゲタ箱に入れるのも同じ理屈だ。
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管理人:icchou
非常勤講師