勉強を兼ねて、図表類を引用してまとめておきます。
出典は、国立がん研究センター/がん情報サービス/
がんの統計/2017年版(2018/4/5)
この資料は1974年から2年に一度発刊、2008年から毎年刊行。今回掲載されているのは、主に
2016年のデータ。
引用元の資料には、いろいろなデータがありますが、主に“
全がん”についてのデータをここに引用します。部位別については、別エントリー
がんの統計2017、詳細編へに記載して、個別のリンクを付けています。
目次
1.まず、はじめに、粗死亡率・年齢調整死亡率とは
2.死亡者数、粗死亡率(リスクの“ものさし”)など
3.主要死因別 粗死亡率 年次推移
4.年齢調整死亡率 年次推移
5.年齢調整死亡率 世界の状況と日本
6.がんの死亡リスク
7.がんの罹患リスク
8.がん年齢調整死亡率・罹患率年次推移
9.都道府県別 全がん 75歳未満 年齢調整死亡率
1.まず、はじめに、粗死亡率・年齢調整死亡率とは
粗死亡率とは?
通常1年単位の死亡数を人口で割った死亡率で、年齢調整をしていない死亡率という意味で「粗」という語が付いています。日本人全体の死亡率の場合、「
人口10万人のうち何人死亡したか」で表現されます。
年齢構成の異なる集団間で比較する場合や同一集団の年次推移を見る場合には、
年齢調整死亡率(年齢構成の影響を除去した死亡率)が用いられます。
年齢調整死亡率とは?
がんは高齢になるほど死亡率が高くなるため、高齢者が多い集団は高齢者が少ない集団よりがんの
粗死亡率が高くなります。そのため仮に2つの集団の粗死亡率に差があっても、その差が真の死亡率の差なのか、単に年齢構成の違いによる差なのか区別がつきません。
そこで、
年齢構成が異なる集団の間で死亡率を比較する場合や、
同じ集団で死亡率の年次推移を見る場合に年齢調整死亡率が用いられます。
もし人口構成が基準人口と同じだったら実現されたであろう死亡率として、集団全体の死亡率を、
基準となる集団の年齢構成(基準人口)に合わせた形で求められます。
年齢調整死亡率は、基準(標準)人口として何を用いるかによって値が変わります。
基準人口として、国内では通例
昭和60年(1985年)モデル人口(昭和60年人口をベースに作られた仮想人口モデル)が用いられ、国際比較などでは世界人口が用いられます。
Σ{(観察集団のX歳死亡率)×(基準集団のX歳人口)}
--------------------------------------------
基準集団の総人口
以上の出典は
がん情報サービス、
ウータンの統計講座【参考】
なぜ、日本のがん死亡者数はどんどん増えているのか?(大須賀覚 Yahoo個人 2020/8/31)
2.死亡者数、粗死亡率(リスクの“ものさし”)など
この項だけ、別の統計資料からの引用ですが、同種のデータは一致しています。主な死因別死亡数の円グラフ

これが、一般におおよそ
3人に1人ががんで死亡、という実データ。
本題から少し逸れますが、主要死因別 死亡数と粗死亡率
この死亡率(10万人当たりの死亡数)は、統計データから算出した
リスクの“ものさし”になります。

転記元:
リスクの“ものさし”いろいろ(比較図表)全がんの年齢階級別の死亡率 2016年
上表の
全がんの死亡リスク 298人/10万人は全年齢で大括りすぎて実態をイメージできないので、年齢階級別のグラフを作成しました。。データ出典は資料72ページ

あたりまえの結果ですが、高齢になるほど、死亡率が指数関数的に増えるのがわかります。
本題から逸れますが、肺炎の年齢階級別の死亡率 2016年
近年は人口の高齢化の影響により、
肺炎が死因の第3位。
上表の
肺炎の死亡リスク 95人/10万人の年齢階級別のグラフを作成しました。

3.主要死因別 粗死亡率 年次推移

近年は人口の高齢化の影響により、
肺炎が死因の第3位。
がんについて男性が女性の
約1.5倍。男性361、女性239(人口10万対)
粗死亡率が高い部位は、
.男性肺が最も多くがん死亡全体の23.9%を占め、次いで
胃(13.6%)、
大腸(12.3%)、
肝臓(8.4%)、
膵臓(7.8%)。
女性大腸が最も多く(15.1%)、次いで、
肺(14.0%)、
膵臓(10.7%)、
胃(10.2%)、
乳房(9.1%)

詳細は、
部位別がん死亡率 年齢層別にどのがん死亡が多いかは、
年齢階級別がん死亡 部位内訳 年齢層別の部位別のグラフは、がん情報サービス/
グラフデータベースが便利です。
【参考】
死因別死亡率の長期推移(1899年~) 「本川裕さんのサイト、社会実情データ図録」
4.年齢調整死亡率 年次推移
主要死因別

3項の粗死亡率では近年増加傾向にある
がん、
心疾患、
脳血管疾患の
3大死因の年齢調整死亡率は近年、減少傾向。
脳血管疾患は、年齢調整死亡率ではより急激な減少。
年齢階級別の主要死因でみた場合、
がんは
40歳~89歳で死因1位。
【参考】
「日本のがん死亡率は先進国のなかで唯一上昇している」の嘘(大須賀覚 がん治療で悩むあなたに贈る言葉 2018/9/19)
部位別
【主要部位別】
年齢調整死亡率が
近年増加している部位
女性で、
子宮(近年横ばいだったが増加に転じた)、
乳房(近年まで横ばい傾向が続いていたが増加に転じた)近年減少している部位
男女で、
胃(1960年代から続く顕著な減少)、
直腸、
肝臓(近年の減少が顕著)、肺。
男性では、
前立腺で減少傾向。
【詳細部位別】
男女とも
膵臓がんで近年までの増加傾向が横ばいに転じた。
食道、
胆のう・
胆管、
甲状腺、
白血病では近年減少傾向。
5.年齢調整死亡率 世界の状況と日本
全がん、全年齢、【男】日本男性は111.9で上から2番目のランク。上限の年齢下げていくと0~59歳では一番下のランクになる。
全がん、全年齢、【女】日本女性は64.3で一番下のランク。

参考までに
死亡率全体年齢調整死亡率(世界標準人口10万対)

6.がんの死亡リスク
この項の出典は、国立がん研究センター/がん情報サービス/
最新がん統計全がんの年齢階級別の死亡リスク
累積生涯がん死亡リスクの推定では、男性で26%、女性で16%、つまり
男性ではおおよそ4人に1人、女性ではおおよそ6人に1人ががんで死亡する。
【累積死亡リスクとは】 累積リスクは
現在0 歳の人の将来のリスクを表し、年齢構成(高齢化)の影響を受けない。
関連する指標として、総死亡数に占めるがん死亡者数の割合があるが(日本では現在おおむね3人に1人)、これは年齢構成の影響を受け、高齢化によって増加する傾向がある。
年齢階級別の死亡率を基に、生命表の手法を用いて算出される。
この手法では、0歳の人100人からなる集団を想定し、その集団を加齢させて、発生したがん死亡者とそれ以外の死亡者を減らしていき、最終的に0人になった時点で、それまでのがん死亡者の数を合計する。それが生涯累積死亡リスク(100人中何人が、がんで死亡したか)に相当する。
現在の年齢別のがん死亡リスク
例えば、現在40歳の男性が20年後までにがんで死亡する確率は2%

7.がんの罹患リスク ここは2014年データ
この項の出典は、国立がん研究センター/がん情報サービス/
最新がん統計全がんの年齢階級別の罹患率
データ出典:地域がん登録全国合計によるがん罹患データ(2014年)
全がんの年齢階級別の罹患リスク
累積生涯がん罹患リスクの推定では、男性で62%、女性で47%、つまり
男性・女性ともに、おおよそ2人に1人が一生のうちにがんと診断される。
詳細は、
部位別がん粗罹患率2013年齢層別にどのがん罹患が多いかは、
年齢部位別がん罹患数割合(40歳以上)年齢層別の部位別のグラフは、がん情報サービス/
グラフデータベースが便利です。
【メモ】
若年世代がん、年間2万人 20代未満1位は白血病(産経ニュース 2018/5/30)
現在の年齢別のがん罹患リスク
例えば、現在40歳の男性が20年後までにがんと診断される確率は7%

8.がん年齢調整死亡率・罹患率年次推移

近年、全がんの年齢調整死亡率は減少傾向、
年齢調整罹患率は増加(胃がんを除いても同様)。
年齢を75歳未満に限った場合も全年齢と同様の傾向。
2016年の全がんの75歳未満年齢調整死亡率は、2005年に比べて17.2%減少した。
9.都道府県別 全がん 75歳未満 年齢調整死亡率

全がん死亡率が
高い上位5県 男女計 青森県、秋田県、鳥取県、北海道、大阪府
男性 青森県、鳥取県、秋田県、北海道、大阪府
女性 青森県、秋田県、北海道、岩手県、福岡県、
全がん死亡率が高いこれらの都道府県は、主要5部位(胃、大腸、肝臓、肺、乳房)の死亡率も高い傾向。
全がん死亡率が
低い上位5県 男女計 長野県、滋賀県、大分県、福井県、山形県
男性 長野県、滋賀県、福井県、大分県、山形県
女性 長野県、岡山県、徳島県、山形県、香川県
関連エントリー
がんの生存率いろいろ粗死亡率上位