規格構成はほぼ同等と考えてよいが、マネジメント対象の特定に関する要求事項及び運用に関する要求事項がISO 50001ではより詳細になっている。
マネジメントの対象の特定に関して、 ISO 14001では
環境側面の1項目でまとめられているが、ISO50001では
エネルギーレビュー、
エネルギーベースライン及び
エネルギーパフォーマンス指標の3項目となっている。
また,運用関連の要求事項としては、ISO 14001が
運用管理の1項目であるのに対して、ISO50001ではやはり
運用管理、
計画設計及びエネルギーサービス、
製品,設備及びエネルギーの調達の3項目が取りあげられている。
また、ISO 14001では
緊急事態への準備及び対応が運用の最後の項目として取りあげられているが、 ISO 50001には独立した項目はなく、運用管理の項に注記としての記述があるのみである。
ISO 50001 | ISO 14001 |
1 適用範囲 | 1 適用範囲 |
2 引用規格 | 2 引用規格 |
3 用語及び定義 | 3 用語及び定義 |
4 エネルギーマネジメントシステム要求事項 | 4 環境マネジメントシステム要求事項 |
4.1 一般要求事項 | 4.1 一般要求事項 |
4.2 経営層の責任 | -- |
4.2.1 トップマネジメント | -- |
4.2.2 管理責任者 | 4.4.1 資源、役割、責任及び権限 |
4.3 エネルギー方針 | 4.2 環境方針 |
4.4 エネルギー計画 | 4.3 計画 |
4.4.1 一般 | -- |
4.4.2 法的要求事項及びその他の要求事項 | 4.3.2 法的要求事項及びその他の要求事項 |
4.4.3 エネルギーレビュー | 4.3.1 環境側面 |
4.4.4 エネルギーベースライン | -- |
4.4.5 エネルギーパフォーマンス指標 | -- |
4.4.6 エネルギー目的、エネルギー目標及びエネルギーマネジメント行動計画 | 4.3.3 目的、目標及び実施計画 |
4.5 実施及び運用 | 4.4 実施及び運用 |
4.5.1 一般 | -- |
4.5.2 力量、教育訓練及び自覚 | 4.4.2 力量、教育訓練及び自覚 |
4.5.3 コミュニケーション | 4.4.3 コミュニケーション |
4.5.4 文書化 (4.5.4.1 文書化要求事項) (4.5.4.2 文書管理) | 4.4.4 文書類 4.4.5 文書管理 |
4.5.5 運用管理 | 4.4.6 運用管理 |
4.5.5 (注記) | 4.4.7 緊急事態への準備及び対応 |
4.5.6 設計 | -- |
4.5.7 エネルギーサービス、製品、設備及びエネルギーの調達 | -- |
4.6 点検 | 4.5 点検 |
4.6.1 監視、測定及び分析 | 4.5.1 監視及び測定 |
4.6.2 法的要求事項及びその他の要求事項に対する順守評価 | 4.5.2 順守評価 |
4.6.3 EnMSの内部監査 | 4.5.5 内部監査 |
4.6.4 不適合に対する修正、是正処置及び予防措置 | 4.5.3 不適合並びに是正処置及び予防措置 |
4.6.5 記録の管理 | 4.5.4 記録の管理 |
4.7 マネジメントレビュー | 4.6 マネジメントレビュー |
4.7.1 一般 | -- |
4.7.2 マネジメントレビューへのインプット | -- |
4.7.3 マネジメントレビューからのアウトプット | -- |
エネルギーパフォーマンスへの注目
ISO 50001では要求事項の大半が
エネルギーパフォーマンスを○○せよというものである。すなわち、エネルギーパフォーマンスが
非常に重視されているのである。
ISO 50001におけるエネルギーパフォーマンスに関する要求を大きく分けると、
① エネルギーパフォーマンスの
把握 ② エネルギーパフォーマンスの
改善 の2点に集約される。このマネジメントシステムでは、組織の
エネルギーパフォーマンスを正確に把握することから始まって、これを確実に改善することが求められる。
エネルギーパフォーマンスの
把握に関しては、
計画の段階で3項目が要求される。すなわち、
データベースのエネルギーレビューを作成し、これに基づいて
エネルギーベースラインを設定し、その後の
改善を評価するためのエネルギーパフォーマンス指標を設定することが求められる。
ま、エネルギーパフォーマンスの
改善については、
運用関連の3項目に規定されている。組織は施設、設備、プロセス及びシステムをエネルギー方針、目的及び目標に沿った
エネルギーパフォーマンスが実現されるように運用しなければならないし、これらの設備などを
新設,改装する場合には、エネルギーパフォーマンス
改善を考慮しなければならない。また、エネルギーサービス、製品、設備及びエネルギーを
調達する際には、エネルギーパフォーマンスを
評価し、使用期間を通してのエネルギーパフォーマンスを
予測・評価しなければならない。
さらに、ISO 50001では、エネルギーパフォーマンスの
改善を果たすための実行計画が求められるが、ここでは
改善の検証方法を定めておくことも要求される。
このようにISO50001ではエネルギーパフォーマンスに関して、その
把握、改善及び検証まで求められているが、ISO 14001では環境パフォーマンスに関するこのような要求事項は全く見られない。ISO 14001で、マネジメントシステムを改善することによって環境パフォーマンスが向上することを期待しているのである。
コミュニケーションについて
ISO 14001では環境方針の公開は必須であるが、ISO 50001はそうではない。
また、ISO 14001では外部コミュニケーションについても内部コミュニケーションと同様にその手順及び実施が求められているが、ISO 50001では外部コミュニケーションは全体として組織の裁量事項とされており、エネルギー方針は、エネルギーマネジメントシステム及びエネルギーパフォーマンスとともにこの中に示されている。
まとめ
両規格はともにマネジメントシステムのモデルを示すものであって、
共通のフレームワークをもつものであるが、要求の重点あるいは内容には際立った相違点がある。
ISO 14001が、全ての環境側面のマネジメントを組織の活動範囲を超えて規定しているのに対して、ISO 50001は
重大な環境側面の一つであるエネルギーの使用に特化したマネジメントシステムを,
組織の活動範囲の中に限定して規定している。その代わり、ISO 50001では
エネルギーパフォーマンスの厳密な把握とその改善、あるいは改善結果の検証までを求めている。