環境省主催で「福島原発事故にともなう住民の健康のありかたに関する専門家会議」がほぼ月1回のペースで開かれている。
第4回(2014年3月26日)の会議では、元放射線医学総合研究所主任研究官・医学博士の崎山比早子氏が意見を述べた。崎山氏は福島原発事故の国会事故調査委員会の委員を勤め、反原発の科学者たちで作る「高木学校」の主要メンバーの一人だ。
3月26日の会議で、崎山氏は広島にある放射線影響研究所の小笹(Ozasa)氏らが執筆した論文「原爆被爆者の死亡率に関する研究、第14報、1950~2003年」を根拠に「線量あたりの(総固形がんの発がん)リスクは、200ミリグレイ以下の方が全線量域のリスクよりも高い」、「このことから論文の著者らは、放射線が安全なのは放射線がゼロのときのみだと結論しています」と述べた。
これに対して、委員から「論文の結論の書き方がちがっているのではないか」、「安全なのは線量ゼロの時のみというのは、崎山先生の解釈であって、小笹先生の解釈、主張ではない」、「線量の低いところのリスクは小さいので、検出値はバックグラウンドのゆらぎの中に隠れてしまう。論文ではリスクがゼロかどうかを議論しているのではない」と厳しく指摘された。
崎山氏が小笹論文の内容を誤解、曲解したのが問題ではない。それは崎山氏の論文読解能力が低いだけのことだ。問題は資料として崎山氏が提出した引用文献の示し方が専門家としてルール違反なのだ。
漫画(美味しんぼ)で「大阪の焼却場近くの住民1000人を対象とした調査で不快な症状を訴える人が約800人いた」と語ったのは、岐阜環境医学研究所の松井英介所長(医師)だ。松井氏と崎山比早子氏は共著で「放射線被ばくから子どもたちを守る」という本を書いている。
864円出してわざわざ買う本ではない。ほぼ同じ内容が無料でダウンロ-ドできる。
こういった類の医師、専門家、科学者は放射線問題だけでなく、農薬、添加物、遺伝子組換え食品などの分野にもしばしば登場する。彼ら彼女らはしたたかだ。「○○先生も言っている、論文にも書いてある」と都合の良いところだけをつまみ出して、不安、恐怖を煽る。これに対してきちんと警告を発し、退場を命じるレフリーがいないので、反則行為はお構いなしだ。
試合の流れ、相手(取材記者)の力量を見抜くのもうまい。相手によって、情報の出し方をコントロールし、専門知識が豊富そうな記者には、怪しい情報はもちださない。オフサイドラインを自在にあやつり、若手や専門知識のない記者がトラップに引っかかる。私の知る限り、東京新聞、毎日新聞の若手や中堅叙情派記者が崎山氏の言われるままを記事にしている。
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管理人:icchou
非常勤講師