片瀬久美子さんが次の記事を纏めておられます。
●warblerの日記 2012/6/30
福島の原発事故と、チェルノブイリの原発事故の被ばく量などの比較-福島の現状について 引用させて戴くと共に、自分なりの理解のため、データを追加したり2次的に加工したグラフを作成しました。
1.事故で大気中に放出された放射性物質とその量(チェルノブイリ事故、原子爆弾との比較)
総量
全て引用です。(グラフを横型に変えただけ)
PBq(ペタBq)=10
15Bq
福島の原発事故で最も多く放出されたキセノンXeは希ガスであり、上空に飛んでいったまま地上に降下してこないのと、化学的に不活性なので生物体内に積極的に取り込まれて濃縮したりということもないので、人体への影響は無視できます。
揮発性元素、中程度の揮発性元素、難揮発性元素の量ともチェルノブイリ事故の多さが分かります。
【追記】
追加核種
片瀬久美子さんは原爆までの比較の切り口で核種をピックアップされていますが、
以下、Cs-134,Te-129m,Pu-238,Pu-239,Pu-240,Pu-241の6種を追記しました。(下表の黄色)。追加核種データの出典は原ブログと同じ資料です。
PBq(ペタBq)=10
15Bq
ヨウ素 I-131 (揮発性元素)
グラフを単独にして横型に変えただけです。
揮発性元素、
I-131の量はチェルノブイリは福島の11倍です。
各元素 (揮発性、中程度の揮発性、難揮発性元素)
引用+追加核種。目盛は上のI-131グラフの
約1/10です。
福島の原発事故では広島の原子爆弾よりも揮発性元素 Csは多いですが、中程度や難揮発性元素は広島の原子爆弾の方が多いです。
中程度や難揮発性元素がチェルノブイリ事故で多く放出されたのは、原子炉そのものが爆発した事により、燃料棒ごと大気中に撒き散らされたことによると考えられます。
一方、福島の原発事故では原子炉そのものは大きく破損せず、揮発し易い元素が中心に放出されたのがチェルノブイリのケースとは大きな違いとなったと考えられます。
チェルノブイリは福島に比べて、Cs-137で5.7倍、Cs-134で2.6倍、Sr-90で71倍、Sr-89で58倍です。
プルトニウム Pu (難揮発性元素)
追加核種です。目盛は上のグラフの
1/100です。
福島の量は少ないのでグラフに現れて来ません。4種合計で、
チェルノブイリは福島の約2200倍です。
2.ストロンチウムSr-90はセシウムとの比率で把握すれば良い
ここは
既エントリーからの転記です。
●「toshi_tomieのブログ」 2012/2/15
セシウム-ストロンチウム = 2、10、100、2000 for 大気圏内核実験、チェルノブイリ、1986年の黄砂、福島県土壌 *4 結論だけ引用します。
| Cs-137:Sr-90 | Cs-137:Cs-134 |
大気圏内核実験の日本へのフォ-ルアウト | 2:1 | 1:0 |
チェルノブイリ事故の日本へのフォ-ルアウト | 100:1 | 1:0.5 *1 |
(地元での影響、すなわち チェルノブイリ事故での大気放出放射能) | (10:1) |
今回の原発事故で福島県の土壌中に蓄積 | 1000:1*3 | 1:1 *2 |
ブログ主注 *1:
出典はこちら (正確には 1:0.55)
*2:正確性に拘るなら2012年前半では6:4とすれば良い(半減期の影響)。
*3:Srの検出は80km圏内の限られた地点(
既エントリー参照)
さらに詳細な情報は下記を参照。
●buveryの日記11/6 私が、『福島のプルトニウムは無視して良い』と考えるわけ *4 こちらのブログには、チェルノブイリの核種毎の放出量が対数グラフで掲載(半減期と共に)されていますので、引用させて戴きます。
(この富江敏尚さんが引用している数値と片瀬久美子さんの引用数値が同じであることを確認しました。)
3.関連ブログ記事
●カクリ論 2011/11/20
放出核種の図/チェルノブイリ・福島・広島 (この中で一瀬昌嗣先生が引用している数値と片瀬久美子さんの引用数値が同じであることを確認しました。)
4.放射性セシウムによる内部被曝量、放射性ヨウ素による内部被曝量、外部被曝量、まとめ
原ブログ●warblerの日記 2012/6/30
福島の原発事故と、チェルノブイリの原発事故の被ばく量などの比較-福島の現状についての判りやすいグラフなどをご覧下さい。
(一部引用)
チェルノブイリのケースとの大きな違いは、原発事故によって放出された放射性物質の種類と量が大きく違うことと、事故後直ちに食品の規制がされたこと、水道水等の放射性ヨウ素濃度が上昇した時に供給を直ぐにストップした事、などが大きいと考えられます。
自給自足が多いチェルノブイリ周辺の状況と比較して、日本では食品の流通が行き届いていて汚染の少ない食品が事故後に被災地に供給できたことも大きいでしょう。また、農産物の汚染が少なくなる様に工夫してきた農家の方々の努力と技術の高さも評価できると思います。
5.つぶやき
チェルノブイリと福島を比較する時は、放出の全体の定量的データの認識が基本になります。例えば、セシウムだけの比較をしてもあまり意味がありません。(本エントリーの定量値以外のファクターとして、陸地と海上への放出比率(超概略で1:1*)も考慮に入れる必要があります。)
* ●「3.11東日本大震災後の日本」2012/4/22 福島第一原発事故で海洋に流出した放射性セシウム量は全体のわずか2%?
このような放出量の違いに加えて、片瀬久美子さんが纏めているように、最近になってWBC等の様々な検査・調査により、福島の方々の内部・外部被曝がかなり小さいことが判ってきています。これは事故後の関係者の尽力による成果だと思います。
それらを総合すれば、今回の事故で健康被害が現れることはない、というDNAに関する分子生物学の研究結果を中心とした説明には納得できるものがあると思います。 【参考追記】
原爆と比較して云々との説明が、2011年7月の児玉国会証言から始まり、それ以降もありますが、児玉国会証言を含め、そのほとんどは誤った数値です。
広島原爆の放出放射能は、福島第一事故による放出放射能の10倍程度です。
さらに、被害は放射能の『総量』ではなく、放射線の時間的空間的『密度』で決まりました。極めて高い放射線密度だった広島原爆を原発事故と比較して議論しようとしたこと自体、余りにも愚かなことです。
また、原爆被害はエネルギーで発生したことからみれば、広島原爆のエネルギーは、爆風(50%)、熱線(35%)、放射線(5%)、残留放射能(10%)と見積もられている様で、当然ですが被害の大半は爆発に依るものです。
(出典)
http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/51987256.html http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/51987610.html http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/51994267.html 
【個人的メモ】
「カクリ論」
放出量、降下量、被曝量の備忘録
雑談ですが、(以前、仕事の延長で)旅客機のメンテミス防止の取り組みを勉強したことがあります。ほとんど忘れてしまいましたが、“作法的なもの”と“(小さくても)失敗の共有と再発防止”を重視していたのが強く印象に残っています。