『原発の代替エネルギーは云々、、、』と言った情報を自分なりに理解するに当たって、各種の発電方法の組み合わせ(
ベストミックス)の話を整理しておく。
1.電力は貯められない。 電気というエネルギーは
発電と同時に消費されていくという特徴がある 。
同時同量の原則* * ●電力供給は足りなくなったら瞬時に連鎖してダウンする(波及事故、波及連鎖、ブラックアウト、電力不足ドミノ) 電力会社は、ピークの需要(夏季の午後)を賄う事ができるように、各種の発電設備を用意しておく必要があるが、同じ日でも、夜間の需要はピークの半分になるため、発電設備を止めなくてはならない。
設備を止めたり、動かしたりする『優先順位』がある。
電力会社では、季節や曜日による変動、その日の気温などを鑑み、毎日、どのくらいの電気が消費されるかをリアルタイムで予測し、細かな発電計画を立てている。
電力供給システム全体としては、常に予想使用量を上回る電力を準備していなければならない

出典:電気事業連合会
2.ベース電源:原子力、流水式水力、地熱 まず、どんなときでもフル稼働で発電させる「ベース電源」群がある。
原子力はもともと臨界状態になったら出力調整は極力したくないシステム(出力調整棒の抜き差しにはリスクを伴う)なので、普通は一回発電状態になったら、次の定期点検で炉を止めるまではフル稼働で動き続ける。
流水式水力は、貯水式水力のように水を溜めることができないため、これも常時フル稼働させる。
地熱発電も、同様に、ほぼ一定の出力を出し続けているので、わざわざ止めることはしない。(図では示していない)
これらが、一旦発電を開始したら24時間動かし続ける「ベース電源」を形成する。
3.ミドル電源:最新式高効率火力(図では示していない)
次に積み上げるのが
最新式高効率火力である。高効率の火力発電はエネルギー効率が45%近い高効率を誇っている(最先端の発電所では発電効率が約60%のものも)。しかし、これは簡単に止めたり再稼働させたりすることはできず、出力調整幅が狭い。
【メモ】
再エネの導入を支える、高効率で柔軟性の高い石炭火力発電(竹内純子 IEEI 2018/11/19)
4.ピーク電源、その1:出力調整幅を大きく持たせた火力発電 出力調整幅を大きく持たせた火力発電はエネルギー効率は低くなる(“燃費が悪い”と言う事)。当然、このタイプの火力発電を使うと、より多くの燃料を使うことになる。
5.ピーク電源、その2:揚水式水力発電 夜間の余剰電力で汲み上げた水を、ピーク需要時に落として水力発電して補うのが
揚水発電だ。
一度発電した電気で水を持ち上げ、それを落としてもう一度発電するわけだから、エネルギー効率は非常に低い。
本質的な事ではないと思うが、Web上には
揚水発電と原発の関係で、異なった説明がある。
●原発とセットの説明 電力需要が落ちる夜間でも止めることができない原発が発電する余剰電力は、揚水発電所で水を汲み上げることに消費される。原発という出力調整ができないシステムを補うために、苦肉の策として使われているものだ。
揚水発電所は、必ず原子力発電所と対になって建設されているもので、揚水発電所の建設費用は、原発建設の必要経費の一部といってもいい性格のもの。実際、揚水発電所がなければ、余剰の夜間電力を"捨てる"場所がなく、原発の運転に支障を来す。
●原発とセットしない説明 必ずしも原発とセットではなく、夜間の余剰電力を活用して、ピーク電力対策や電力需要の波のバッファーを作る有効な手段。
(関連エントリー)
●“原発と揚水発電は不可分の関係”は誤りか? 6.ピーク電源、その3:貯水型水力発電 貯水型水力も蛇口を開け閉めすればいいだけだから、いちばん柔軟に発電量をコントロールできる。
7.各種電力の安定供給性 どの位、安定して発電できるかもポイントの一つであるが、特にピーク時には、発電余力が少ないため、
安定供給性は重要になる。
人為的コントロールが不能な
風力発電、太陽光発電はかなり不利である。
8.節電の意義、その他 電力需要量が減るということは限りある資源をなるべく長持ちさせるという面では好ましいことである。
特に、ピークの需要時の節電対策は大きな効果を生む。
以上の話に、さらに
コスト(経済効率性)の話を入れると、『
電源のベストミックス』の話となる。
9.宿題 以上の話が、総電力の77%が原発である
フランスの場合は、どうなるのか? 原発も出力調整しているのかな。
(Web上では、色々な説がある様だ)
●最大電力発生日における1日の電気の使われ方の推移【主に参考とした資料】 電気事業連合会のHP 【関連エントリー(新しい順)】 ●やはり隠している?東電 今夏の需給見通し ●東電の発電設備のエネルギー種類毎の詳細 ●今夏季の東電の供給電力 ●発電の種類、ベストミックスとは(色々な話の前提) →本エントリーです