朝日新聞11/16では
福島原発周辺住民、内部被曝量は限度以下 京大など調査。
日経11/16では
福島在住成人の内部被曝「気にする水準でない」京大が調査 福島第一原発
周辺の住民の
食事や呼吸による内部被ばく量がどれくらいになるかを京都大などのグループが調べた結果、最大に見積もって
計0.16mSv/年で、年間線量限度1mSv/年をはるかに下回った。内部被ばくの危険性が低い事を科学的に検証した調査結果である。
元になる京大の論文は
福島県成人住民の放射性セシウムへの経口、吸入曝露の予備的評価 さて、新聞記事は簡潔すぎるし、論文を読むのはチョット手ごわい。
勉強がてら、論文から抜粋して
その中間の情報に仕立ててみます。
●著者 石川裕彦教授 京都大学防災研究所
小泉昭夫教授 京都大学大学院医学研究科
原田浩二、新添多聞、足立歩、藤井由希子、人見敏明、小林果、和田安彦、渡辺孝男
●調査期間:2011年7月2日~8日
●住民が実際に食べたり吸ったりする
食料やちりに含まれる放射性セシウムCs134+137の
経口、吸入被ばく量を調べた。
●1日量の食事セット、野菜・果物類、牛乳を地域の商店で購入
(各市町村の地元住民がよく利用する食料品店)
"A"は大気粉じん捕集を行った場所を示す。
"M"は食事セット、水道水を収集した場所を示す。
"V"は野菜・果物類、牛乳を収集した場所を示す。
各英字はおおよその地理的な位置を示している。
すべての食餌試料を30キロメートル圏外から収集した理由は、現在、原発から20~30キロメートル圏内は緊急時避難準備区域または計画的避難区域に指定され、商店における販売が停止しているためである。
●経口による内部被ばく量の調査方法と結果 成人1人の1日量の食事を代表するような55の食事セットの放射性セシウムCs134+137を測定。
食事の1セットは、調理済みの朝食、昼食、夕食、間食および嗜好品の成人1人当たりの1日消費分である。採取した水道水を1L/セット入れる。
詳細メニューはこちら(← かなり細かい!大変な調査だ。) 対照となる食事セットは7月に京都府宇治市で19セット集められた。
| 食事 セット 数 | 摂取量 Bq/日 最大値 | 預託実効線量 μSv/年 |
Cs134 | Cs137 | 最大値 | まとめ |
福島 | いわき市 | 10 | 2.5 | 1.6 | 24.7 | 検出は55件中36件
中央値:3.0、最大値83.1μSv/年 |
相馬市 | 10 | 7.2 | 7.0 | 83.1 |
二本松市 | 10 | 0.9 | 0.9 | 10.4 |
福島市 | 25 | 0.8 | 1.3 | 11.3 |
計 | 55 | . | . | . |
京都 | 宇治市 | 19 | 0.4 | 0.5 | 5.3 | 検出は19件中1件 最大値5.3μSv/年 |
最小検出限界は食事セット試料で0.05 Bq/kg
放射能強度は半減期に基づいて、2011年3月15日時点の値に換算
実効線量係数はCs134:0.019μSv/Bq、Cs137:0.013μSv/Bq
●牛乳(21試料)と野菜・果物類(43試料)のCs134 とCs137も測定しているが、省略
●吸入による内部被ばく量の調査方法と結果 空気捕集装置を用いて大気中エアロゾルを採取・分析。9市町村の16地点
| 地点 数 | 大気中の放射能 mBq/m3 最大値 | 預託実効線量 μSv/年 |
| Cs134 | Cs137 | 最大値 | まとめ |
福島市 | 6 | 5.3 | 7.6 | 2.9 | 最大値 76.9μSv/年 |
伊達市 | 1 | 7.9 | 6.4 | 3.0 |
相馬市 | 2 | 1.1 | 2.3 | 1.4 |
南相馬市 | 1 | 0.7 | 1.1 | 0.4 |
二本松市 | 2 | 4.2 | 7.3 | 2.7 |
川俣市 | 1 | 6.3 | 6.1 | 2.7 |
飯館村 | 1 | 24.6 | 38.9 | 14.7 |
浪江町 | 1 | 148.2 | 194.2 | 76.9 |
葛尾村 | 1 | 65.0 | 64.0 | 27.7 |
計 | 16 | . | . | . |
最小検出限界は粉じん試料で0.2 mBq/m3
放射能強度は半減期に基づいて、2011年3月15日時点の値に換算
地上1.5メートルで大気を捕集。
沈着した放射能が再浮遊されたものである可能性が高い。
成人の1日標準呼吸量を20m3として、ダスト中全てのセシウムを吸入していると仮定。(保守的アプローチを採用)
実効線量係数はCs134:0.02μSv/Bq、Cs137:0.039μSv/Bq
●上記では、同時に空間線量率、土壌中放射能も測定しているが、省略。
●結果 最高値同士を合計しても
83.1+76.9=160μSv/年=0.16mSv/年
となり、年間線量限度1mSv/年をはるかに下回った。
(濃度の高い食料を毎日食べ続け、最高濃度の地点にずっと居て、そこの粉じんを100%吸い込んだ、と言う仮定)
【追記】
●
食事調査から見た内部被曝の評価 2012/6/1 小泉昭夫
2011年12月の2次調査(福島食事調査)も含めた資料です。
【つぶやき】
(いつもの事だが)こういう“心配は少ないですよ系”の報道は、少ないし扱いも小さいのは、いかがなものか。【関連エントリー】●放射性セシウムの吸入による内部ひばく、セシウムの土壌付着