ポストさんてん日記

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細胞外マトリックスとは(入口レベル)

[ 2021/02/08 (月) ]
糖鎖について勉強していたら“細胞外マトリックス”という馴染みのない単語が出てきたので。基礎までも行かない入口レベルの勉強です。

目次

1.細胞外マトリックスとは
2.基底膜と間質
3.上皮組織の分類
4.細胞外マトリックスの構成成分
5.プロテオグリカン
6.コラーゲンとエラスチン
7.細胞外マトリックスの機能
8.インテグリンとよばれる一群の受容体
9.コラーゲンの健康食品としてのエビデンス
10.関連エントリー

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1.細胞外マトリックスとは

身体の組織は細胞と細胞以外の物質に分けられ、細胞以外の物質を細胞外マトリックスと呼んでいる。
組織の種類は上皮組織・結合組織・筋組織・神経組織の4種類、という説明が一般的(らしい)。

生体の構成
身体心臓、肺、腸などの器官から構成されている
器官心臓、肺、肝臓、眼、胃などのように独自の構造をもち、それぞれが特定の機能を果たす。
筋肉組織、神経組織、上皮組織、結合組織、などから成り立っている。
組織
上皮組織
結合組織
筋組織
神経組織
細胞
細胞以外の物質細胞外マトリックス
extracellular matrix、英略語:ECM
“マトリックス”は「母体・基盤・何かを生み出すもの」を意味する言葉。
“マトリクス”と表記されることもある。
細胞外基質ともいう。

からだの中の細胞は、マトリックスの骨組みの中にはまりこむ形で存在しているので細胞外マトリックスは細胞の存在するところにはかならず見られ、全身のあらゆる臓器(皮膚を含む)に存在する。
昔は、細胞外マトリックスは細胞間の詰め物としか考えられていなかったが、その後の研究で細胞外マトリックスは細胞接着能を有すること、さらに細胞の移動、分化、増殖など多くの細胞機能を積極的に担っていることが分かってきた。さらに、がん自己免疫疾患といった多くの難治性疾患において細胞外マトリックスの増加や構造変化が起こり、異常な細胞接着が生じることが分かってきている。
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2.基底膜と間質

細胞外マトリックスには、カーペットのように細胞の底面に貼りつく基底膜と細胞をぐるりと取り囲む間質の2種類がある。
基底膜は上皮細胞や内皮細胞の基底部に形成されるシート状の細胞外マトリックスで、細胞接着の足場として働く。また基底膜の構成成分は部位によって異なっており、組織や細胞ごとにカスタマイズされた細胞外環境を構築することで細胞の接着・生存・分化・移動を制御し、組織構築に重要な役割を果たしている。

間質と基底膜
多くの臓器の実質は上皮細胞でできており、基底膜を足場としている。
さらに、上皮細胞だけではなく、例えば心筋、骨格筋、平滑筋といった筋細胞は全て基底膜を足場としている。
全身に張りめぐらされている血管も、内皮細胞は全て基底膜を足場としている。
神経系の細胞でも、グリア細胞やシュワン細胞は基底膜を足場としている。
極端な言い方をすると、結合組織の骨・軟骨の細胞や線維芽細胞を除けば、その他の細胞は全て基底膜を足場としているのである。
出典:PDF生体との相互作用を自在制御するバイオ材料工学(研究開発戦略センター)

“間質性肺炎”という言葉をたまに聞く。肺の間質は肺胞(単層扁平上皮)の壁の部分であり、実際のガス交換に関わる肺胞と区別されている。間質は酸素や二酸化炭素の通り道になっており、この間質を通って肺胞と毛細血管の血液との間でガス交換がおこなわれる。
肺胞と毛細血管

.少し本題から逸れますが。
3.上皮組織の分類

上皮組織とは、体表面や体腔などの内面を“覆う”役割のある組織であり、保護、吸収、ろ過、分泌などに関わっている。
基底膜のシートに細胞がびっしりとスキマなく並んでいる形態。
それぞれの働きをするにあたり、最も適した組織の形態を取っている。
各上皮組織の特徴
出典:【人体】上皮組織(SGSブログ  2018/6/15)

上皮組織の形態による分類
上皮組織の形態による分類
出典:上皮組織の分類(黒澤一弘 note 2020/3/6)

上皮組織の器官系別による分類
上皮組織の器官系別による分類
出典:上皮組織の器官系別による分類(黒澤一弘 note 2020/5/7)

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4.細胞外マトリックスの構成成分

マトリックスは細胞と違ってそれ自体が生きているわけではなく、糖タンパク質(一部は細胞接着分子)や無機質といった物質。

細胞外マトリックスの構成成分存在する器官
繊維成分コラーゲン(非弾性)Ⅰ型骨、象牙質、皮膚
Ⅱ型軟骨
Ⅲ型Ⅰ型と同じ
Ⅳ型基底膜
Ⅴ型Ⅰ型と同じ
Ⅹ型軟骨
エラスチン(弾性)
可溶成分プロテオグリカンアグリカン軟骨
ビグリカン、デコリン
シンデカン細胞膜
パールカン基底膜
接着性糖タンパクフィブロネクチン繊維成分
ラミニン基底膜(上皮組織)
骨シアロタンパク
オステオポンチン骨、破骨細胞
出典:細胞外マトリックスについて(アウトプット歯科)

間質にはI型コラーゲンプロテオグリカン(バーシカン、デコリンなど)フィブロネクチンなどが顕著。
軟骨を作る細胞外マトリックスの主要成分はII型コラーゲンプロテオグリカン(アグリカン)ヒアルロン酸リンクタンパク質など。
基底膜には、IV型コラーゲンヘパラン硫酸プロテオグリカン(パールカンなど)ラミニンエンタクチンなどが見られる。
の主要な細胞外マトリックス成分はコンドロイチン硫酸プロテオグリカンヒアルロン酸テネイシンなどの糖タンパク質
ヒアルロン酸は糖鎖単独で存在する遊離の糖鎖。巨大な糖鎖のすき間に水分子が緻密に入り込めるため、多量の水を保持でき、体内における水分の保持に重要な役割を担っている。

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5.プロテオグリカン

糖鎖のうちの糖タンパク質のひとつで、コアタンパク質(=プロテオ)にグリカン(=多糖)が結合した物質。コアタンパク質に比較して糖の含量が多いため、細胞表面に存在する一般の糖タンパク質とは区別されている。
一般的には、1本のコアタンパク質に数本から数10本の糖鎖(グリコサミノグリカンGAGと略)が結合している複合糖質を総称してプロテオグリカンと呼んでいる。
グリコサミノグリカンにもさまざまな種類があり、コンドロイチン硫酸デルマタン硫酸ヘパラン硫酸ヘパリンケラタン硫酸のみがプロテオグリカンを構成できる。
4項の表に記載の軟骨に存在するアグリカンはコンドロイチン硫酸を含むプロテオグリカンのもっとも代表的なもの。
人体の構成要素で水分は50~70%とされているが、この水は細胞の中にもあるが、細胞外マトリックスにその大部分が含まれている。そしてこの水の多くはプロテオグリカンに結合している。
プロテオグリカン02
出典:プロテオグリカンと弘前大学 (フード・ペプタイド)

糖鎖糖タンパク質についての説明は別エントリー第3の生命鎖、糖鎖(入口レベル)にあります。
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6.コラーゲンとエラスチン

コラーゲン
コラーゲンは体タンパク質の1/3を占めるが、臓器の違いによって異なった分子種が存在することが明らかとなり、見つけられた順番にギリシャ文字の番号が付けられている。
遺伝子工学手法の発展とともにコラーゲン分子種は約20種その遺伝子は約30種存在することが明らかとなっている。(4項の表ではその内の6種のみ記載)
この様に細胞外マトリックスを構成するコラーゲンに多くの種類があることは、各々異なったコラーゲンとしての役割があることを意味している。言い換えるとこれらコラーゲンは各々の遺伝子に支配されており、遺伝子の異常は機能障害、即ち色々な臨床症状を示す病気を招くことになる。
なお、コラーゲンに熱を加えると高次構造の変化を来たし、ゼラチンと呼ばれる。

エラスチン
大動脈,靭帯,肺,皮膚,子宮,弾性軟骨,などに多く含まれるタンパク質。
正常な皮膚を引っ張ると伸びて離すともとに復すが、弾力を持つバネの役割はエラスチンという線維蛋白質が担っている。真皮の80%近くはコラーゲン繊維だが、コラーゲンそのものは太くかたい繊維で鉄骨のように肌の土台を支えている。エラスチン繊維は2%程度だがコラーゲンの間にからみつくように存在し、コラーゲンを支えることで肌の弾力性を保っている。
エラスチンはコラーゲン繊維を束ね、弾力の元となる繊維で、体内の弾力性に富む臓器に多く存在する。
肌の組織図08
出典:ケガで傷が修復する仕組み①(総合体力研究所のスタッフブログ2018/8/20)

  • 線維芽細胞
    コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸といった真皮の成分を作り出す。
    揖傷が加わると揖傷部に遊走し、コラーゲンなどの細胞外マトリックスの産生を始める結合組織の固有細胞であり、細胞外マトリックスを更新する、細胞及び細胞外マトリックスと相互作用を行う、創の収縮を起こす等、創傷治癒過程の中で重要な働きを果たしている。
  • 結合組織(1項の説明によると4種類の組織の一つだが、この用語の定義は素人にはわかりにくい。以下、理解できた範囲で)
    結合組織は全身の器官・組織・細胞の間の隙間を埋め結合するのが、もともとの定義。
    動物体の組織間を満たして、それらを結合・支持し一定の形態および位置を保つ役割を果す組織。
    結合組織は「細胞外マトリックスで結合された組織」と言い換えることができる。
    結合組織には、骨、歯、軟骨、脂肪、腱、靱帯(じんたい)、真皮、皮下組織、いろいろな内臓にあるリンパ組織、血液など、一見構造がかなり異なっているさまざまな種類の組織が含まれる。例えば、骨は、細胞が集まってできているわけではなく、コラーゲンやカルシウムなどを主成分とする物質のかたまりでできている。血液は、血漿の中に血球(細胞)が分散している形が細胞外基質の中に細胞が散らばっているほかの結合組織に似ているので、ちょっと無理やりだが結合組織に含めて考えることが多い

    【参考】結合組織(1年生の解剖学辞典Wiki)

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7.細胞外マトリックスの機能

細胞外マトリックスの機能はプロテオグリカンコラーゲンの機能とも言える。
細胞の足場以外で重要なことは、毛細血管から吐き出された酸素や栄養素、さらには信号伝達物質であるサイトカインやホルモン、NK細胞等の免疫細胞、場合によっては細菌やウィルス等の病原菌や毒素等も一時的に結合保持して、各細胞に配給したり結合したりする機能。また逆に細胞から吐き出された炭酸ガスや老廃物、細胞が産生した有用成分等を一時的に結合保持し、近隣の細胞に渡したり、毛細血管に戻す機能を担っている。
このような活動を通じてプロテオグリカンとコラーゲンは間接的に細胞の分化、増殖、結合、移動等に関わっているものと考えられている。
プロテオグリカンとコラーゲンは、細胞外マトリックスとして上記のような機能を有しているが、さらに単体として各々の機能を有している。
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8.インテグリンとよばれる一群の受容体

今から30年ほど前、インテグリンとよばれる一群の膜貫通性受容体が細胞表面から発見され、このインテグリンが細胞外マトリックスと結合することで細胞の移動、分化、増殖など多くの細胞機能を積極的に担っていることが分かった。
細胞外と細胞内をintegrateする(統合する、まとめる)タンパク質なのでインテグリン(integrin)と命名された。
従来、細胞の増殖は増殖因子が細胞表面の受容体と結合し、増殖を促す信号を細胞内に伝えることにより制御されていると考えられてきた。しかし、細胞が増殖するためには、増殖因子からの信号だけでは不十分で、細胞外マトリックスからインテグリンを介して伝わる信号が同時に入力される必要があった。
また、細胞外マトリックスとインテグリン間の相互作用の研究により、新たな難治性疾患における治療薬開発に発展できることが期待されている。

.本題から逸れますが、別エントリータンパク質(アミノ酸)の基礎、消化・吸収・代謝から酵素までからの転記です。
9.コラーゲンの健康食品としてのエビデンス

従来、「コラーゲンは分解されてアミノ酸になるのだから、お肌の改善などに効くはずがない」と切り捨てられてきましたが、実はこの説はちょっと時代遅れ。ただし、コラーゲンを経口摂取した場合の「ヒトでの有効性」については現時点で信頼できるデータが十分に見当たりらない

コラーゲンって本当に効果があるの?
国立健康・栄養研究所 2018/10/29

コラーゲン
国立健康・栄養研究所 2017/09/5

美肌のためにはコラーゲンを食べるべき?
成田崇信 Yahoo個人 2018/6/15

  • ゼラチンと何が違うの
    コラーゲンとゼラチンは構成成分は同じだが、食品としての性質は異なる。
    コラーゲンやコラーゲンペプチドはプルプルしない。
  • コラーゲンはそのままでは吸収できない?
  • コラーゲンペプチドは何が違う?
    コラーゲンペプチドは分子量が小さいため、消化吸収されやすく、さらにアミノ酸が数個つながったままの状態(ペプチド)で体内に取り込まれることが分かっています。完全に分解されないまま体内に吸収されたコラーゲン由来のペプチドが血液中に増えてくると、それが刺激になって体内でのコラーゲン合成が活性化すると考えられています。これはまだ仮説の段階なのですが、ようするに体の組織が壊れてコラーゲンが血液中に増えてしまった状態と勘違いをさせ、コラーゲン合成を活性化させようという理屈です。
    こうした仮説が提唱され、それを支持する細胞実験や血液を分析したデータがでてきており、コラーゲンを食べても分解されてしまいアミノ酸になるので意味はない、という批判は的外れになってきています。
  • では効果はあるの?
    今のところ「効果があるとは強くいえない」という評価に留まるでしょう。
    コラーゲンペプチドの美肌効果はあるともないともいえない。
  • コラーゲンの栄養価
    栄養素としてはコラーゲンの価値は低くエネルギー源になるぐらい。
  • 低栄養の高齢者に・・・という危険性
    食欲の低下している高齢者がわざわざコラーゲンを食べるのはデメリットの方が大きい。


NHKのコラーゲン番組への疑問
松永和紀 FOOCOM.NET 2017/3/15

【ごく一部のみ引用】
最近注目されているのが、たんぱく質が分解されてできるペプチド(アミノ酸が何個かつながったもの)。これが、特定の生理活性を持ち、細胞に対してシグナルを伝えることで、特定の代謝生合成系に作用するのでは、というのです。各種のペプチドが、体内でさまざまな働きをしていることが今、どんどん分かってきており、ペプチド創薬も盛んに研究されています。コラーゲンのペプチドも、可能性はあるのです。
従来、「コラーゲンは分解されてアミノ酸になるのだから、お肌の改善などに効くはずがない」と切り捨てられてきましたが、実はこの説はちょっと時代遅れ。とはいえ、コラーゲンからできたペプチドの生理活性物質としての効果はまだ、細胞実験や動物実験のレベルの段階でわかってきたにすぎず、「人に効く」と確かな根拠を持って言える状態にはない、というのが私の認識です。
本来、こういうことをきちんと分けて説明すべきだったのに、番組作りはごちゃごちゃ、グダグダ、としかいいようがないものになっていました。


栄養疫学者の視点から[第7話]コラーゲンのエビデンス
今村文昭 医学書院/週刊医学界新聞 第3244号 2017/10/16

【ごく一部のみ引用】
簡単に述べると,コラーゲンには特有とも言えるアミノ酸(水酸化プロリンなど)が含まれており,それを含む化合物の摂取が身体に「コラーゲンが壊れている」と勘違いさせ,その生成を促す(positive feedback)というものです。コラーゲン生成の働きを示す血中の指標については,この仮説と矛盾しない結果が得られています(Am J Clin Nutr. 2017[PMID:27852613])。
ただし,こうした生理学的な知見や小規模の観察だけに基づいて医学的効果を判断すること自体,EBMからずれています。厳密に言えば,コラーゲン摂取の効果には「強いエビデンスはない」と考えるのが良いでしょう。


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10.関連エントリー

血液型は糖鎖の情報、血液型と新型コロナとの関係は?
細胞膜の基礎
第3の生命鎖、糖鎖(入口レベル)
●細胞外マトリックスとは(入口レベル)←本エントリーです。

【メモ】
ムコ多糖とは(㈱サンベール)
[ 2021/02/08(月) ] カテゴリ: 基礎の基礎 | CM(0)
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