ポストさんてん日記

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細胞膜の基礎

[ 2020/11/10 (火) ]
血液型の話がきっかけになって糖鎖について勉強し始めたら、細胞膜について理解が不足していることに気付きましたので先にまとめます。

目次

1.細胞膜はリン脂質二重膜によって構成されている
2.細胞膜の透過性
3.膜タンパク質
4.輸送タンパク質、チャネル・トランスポーター・ポンプの違い
 受動輸送
 能動輸送
5.エンドサイトーシスとエキソサイトーシス
6.関連エントリー

1.細胞膜はリン脂質二重膜によって構成されている

細胞の“中”と“外”を仕切っているのは、細胞膜とよばれる薄い油膜。その厚さは10nm(ナノメートル)以下。
油膜といってもチョット複雑で、リン脂質二重膜と呼ばれる膜。

リン脂質03

リン脂質はグリセリン(グルセロール)脂肪酸が2つ、もうひとつの結合部分にリン酸基が結合した構造。
リン脂質を水とともに振り混ぜると、自然(自発的)に脂質二重層が水滴を取り囲んでできた球状の小胞(リポソーム)が形成される。

脂肪酸は油脂の構成要素でもあり疎水性。脂肪酸分子中に1個の不飽和部があると、脚は二重結合のために、そこで折れ曲がるような形を取る。
リン脂質を形成する脂肪酸は、パルミチン酸,オレイン酸,リノール酸といった炭素数16~18の長鎖脂肪酸が多い。
脂肪酸の説明は別エントリー脂質の消化・吸収・代謝から善玉・悪玉コレステロールまでにあります。

一方、リン酸基は親水性、さらにリン酸基の先に別の親水基(図のX、細胞膜の場合はコリンなど)が結合している。

リン脂質02リン脂質分子10

リン脂質はひとつの脂質分子の中で、疎水性の部分と親水性の部分の両方があるわけ。
細胞膜以外にも、小胞体の膜、ミトコンドリアの内膜・外膜、ゴルジ体の膜など、細胞内に見られる膜は、基本的にはこのような構造をしていると考えられている。
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2.細胞膜の透過性

生命活動に必要な物質はすべて、半透膜の一種である細胞膜を通して細胞の中へと入り不要な物質はこの膜を通して細胞の外へと出ていく。
しかし、その中層部は疎水性のため、疎水性(非極性)分子は脂質二重層に溶け込んで容易に膜を通過することができるのに対し、イオンや親水性(極性)分子は膜を直接通過することは妨げられる。

分子の性質透過性
疎水性(非極性)
分子
N2、O2
炭化水素(脂肪酸、ステロイドなど)
自由に透過
極性のある
小分子
H2O、CO2、グリセロール、尿素ほぼ自由に透過
極性のある
大分子
グルコース(ブドウ糖)などの単糖類、
二糖類
透過できない
イオンや電荷を
持つ分子
アミノ酸、H+、HCO3-、Na+
K+、Ca2+、Cl-、Mg2+
透過できない
小さな分子である水でさえ,極性分子であるがゆえに透過はあまり速くない。

以上までは、一般的な“化学知識”で理解可能な範囲のようですが、以下からはそうも行かないようです。

親水性(極性)の物質やイオンは、膜を貫通する輸送タンパク質を経由することで脂質二重層と接触することなく通過できる。このタンパク質のおかげで、細胞膜は特定のイオンやグルコース(ブドウ糖)などの必要な物質を通すことができる。
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3.膜タンパク質

細胞膜上に存在する膜タンパクは、細胞内外の物質輸送、膜成分の代謝や変換という酵素機能、エネルギー変換機能など、多様な生理機能を有する。
タンパク質/脂質比は0.2~3と膜によって様々で、一例として、赤血球膜の組成(乾燥重量%) は、タンパク質:49.2%、 脂質:43.6%、糖質:7.2%。

脂質の二重膜は、膜タンパク質を浮かべる担体のはたらきをしているだけで、極言すれば細胞膜の性質は、膜タンパク質の性質に依存している。細胞膜は脂質の二重膜の海に膜タンパク質が氷山のように頭を少し出して浮かんだような構造をしていると考えられている。細胞膜には流動性があり、膜タンパク質はこの海の中を自由に動くことができる。
細胞膜モデル
コレステロールは膜の流動性、膜の硬さ、他の脂溶性物質の透過性の調節など重要な機能を担っている。
図の炭水化物と書いてある枝状の部分が糖鎖で、次回勉強の予定。
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4.輸送タンパク質、チャネル・トランスポーター・ポンプ

膜タンパク質のうち、リン脂質二重層を貫通し物質の移動にかかわるタンパク質を輸送タンパク質という。
この輸送には、濃度勾配に基づく拡散によって起こる受動輸送と、エネルギーを用いて濃度勾配に逆らって物質を輸送する能動輸送がある。

人体を構成する細胞が生存して活動する際には、細胞の中のNaとKの濃度を適切に保つ必要があり、細胞はこれらを吸収したり排出したりしている。NaやKは脂質二重膜を通過できないので、輸送タンパク質によってイオンの出入りを制御している。
ちなみに、細胞外液の塩分濃度は0.9%くらい(なので、輸液などの生理食塩液は0.9%)
細胞内液は外液よりナトリウムは少なく、カリウムが多く含まれている。
細胞外液は生命が発生した原始の海のなごりともいえるもので、まだ塩分の濃くなかった原始海洋で出現した生命が、そのときの塩組成をそのまま保持してきているからとみなされている。

受動輸送
チャネルは電気化学ポテンシャルの勾配に従ってポテンシャルの高い方から低い方へ透過する。
チャネルの開閉に関与する刺激によってチャネルが開くと、特定のイオンが濃度勾配に従って移動する。
Kチャネルは細胞の中の過剰のKを細胞の外に流出させるためのトンネルであるが、イオンチャネルには選択性がありK チャネルであれば、K+ イオンしか通しさない(選択的透過性)。
チャネルは、輸送イオンの「通路」を全開にすることができるため、チャネルの輸送速度と輸送量はトランスポーターよりも早い。

受動輸送を行うトランスポーターとして、アミノ酸や糖などを輸送するトランスポーターがある。アミノ酸や糖など輸送される物質と結合すると、構造が変化して入り口を塞ぎ、反対方向を開けて物質を移動する。
その機構の性質上、輸送できる分子に選択性があり、例えばグルコースのトランスポーターはグルコースだけを運ぶことができフルクトースを運ぶことはできない(選択的透過性)。

チャネルとトランスポーターの輸送機序の違い
出典:PDFトランスポーターの分類と研究史(田中光一 2018年)

チャネル      トランスポーター
イオンチャネル  トランスポーター
出典:受動輸送と能動輸送(ベネッセ)

また、水分子のみを通過させ、イオンや他の物質は透過させない膜タンパク質として、アクアポリン(水チャネル)がある。水は、細胞膜を溶解・拡散機構により通過するが、いくつかの細胞(赤血球や腎臓上皮細胞など)の水透過性が高かったため、何か別の機構で水が出入りすることが予想されていた。発見は1992年。

能動輸送
能動輸送を行うトランスポーターをポンプと呼んでいる。
ポンプはイオンの電気化学ポテンシャルの勾配に逆らってポテンシャルの低い方から高い方へ透過する。そこで使用されるエネルギーはATP
Na-KポンプはATPを使って、細胞内のNaを外に汲みだすと同時に、細胞外のKを中に取り込む。
細胞内のNaがナトリウムポンプに結合すると、ATPのエネルギーでポンプの立体構造が変わりNaは細胞外へ排出される。
一方、細胞外のKがポンプに結合すると、ポンプはもとの構造に戻り、Kを細胞内に取り込む。
ポンプ
出典:受動輸送と能動輸送(ベネッセ)

ナトリウム-カリウムポンプによるイオンの輸送
このポンプは体内吸収に関わる小腸の上皮細胞だけでなく、体内のあらゆる細胞で働き、身体の中でミネラルのバランスが常に保たれるように調整されている。
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5.エンドサイトーシスとエクソサイトーシス

エンドサイトーシス:endocytosisは、細胞が他の細胞やタンパク質のような比較的大きな粒子などを取り込むプロセス。
そのような細胞外物質が細胞膜上の受容体(レセプター)に結合することにより始まる。
エクソサイトーシス(エキソサイトーシス):exocytosisはその逆に、比較的大きな粒子などを放出するプロセス。
エンドサイトーシス01
エンドサイトーシス02 : 受容体、エンドサイトーシス03(ウイルスなどの表面のスパイクなどの)タンパク質
出典:[030] エンドサイトーシスと細胞内消化(基礎医学教育研究会(KIKKEN)Lab)

  • endo:“内(部)”という単語。
  • exo:“外(部)”という単語。
  • cytosis:膜動輸送。物質を小胞に入れて細胞内外へ輸送すること。

白血球のうち、好中球,単球,マクロファージは、食細胞とも呼ばれ、特にこのエンドサイトーシス(食作用)が発達している。
エンドサイトーシスはウイルスや細菌の侵入経路としても利用されているため、エンドサイトーシス機構はこれらの病原体に対する創薬の標的としても注目されている。
例えば、RSウイルス感染症の重症化を防ぐシナジスは、ウイルスの膜融合を阻害する薬。

細胞内で合成された物質(ホルモン,神経伝達物質,タンパク質など)の放出の多くは、エクソサイトーシスにより行われる。エクソサイトーシスそのものは細胞膜の補充の役割もしている。
例えば、抗インフルエンザウイルス薬のリレンザ,タミフル,ラピアクタ,イナビルは、ウイルスの細胞からの遊離過程を阻害する薬。
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6.関連エントリー

血液型は糖鎖の情報、血液型と新型コロナとの関係は?
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第3の生命鎖、糖鎖(入口レベル)
[ 2020/11/10(火) ] カテゴリ: 基礎の基礎 | CM(0)
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