ポストさんてん日記

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血液型は糖鎖の情報、血液型と新型コロナとの関係は?

[ 2020/10/26 (月) ]
血液型がA型,B型,O型,AB型の4種類に分類されるのは、赤血球の表面にある糖鎖の違いよるものであること、新型コロナの感染性と関係があるかも知れないこと、などを勉強しました。

目次

1.血液型のお話の前段で、糖鎖とは
2.ヒトの血液型も糖鎖によって決まる
3.ABO血液型の輸血
4.ABO血液型の糖鎖は、赤血球表面だけでなく上皮細胞表面にも存在
5.血液型の糖鎖がウイルスや細菌感染の足場となっている
 ノロウイルスの例
 糖鎖が感染の足場となっている
 新型コロナでは?
6.ABO型4種の中でも、さらにRH+とRH-がある
7.白血球抗原:HLA:Human Leukocyte Antigen
8.血液型の種類は多い
9.血液型性格診断はニセ科学
10.上皮組織の分類
11.主に参考にした情報
12.関連エントリー

1.血液型のお話の前段で、糖鎖とは

糖鎖とは、糖が鎖状に連なったもの(文字そのまま)。単糖と呼ばれる糖の分子が鎖状につながったもの。
例えば、デンプンは、グルコースという単糖がたくさんつながった糖鎖の一種。単糖などの説明は別エントリー『炭水化物』は、糖類、糖質、食物繊維。おまけで人工甘味料、お酒のカロリーにあります。

ヒトの体は約37兆個の細胞から成るが、すべての細胞は無数の糖鎖でうぶ毛のように覆われている。糖鎖は“細胞の顔”として細胞同士の認識や情報の交換を行い、私たちの体の組織や器官を形成する細胞社会のネットワークを維持しており、さらには、細菌やウイルス感染まで関与している。
(糖鎖のお話は奥が深いようで、後日、勉強の予定。今回はこの辺まで。)
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2.ヒトの血液型も糖鎖によって決まる

ヒトの血液型は赤血球表面の脂質についている糖鎖先端の糖の違いに由来している。これを発見したのは、日本人の故・山川民夫氏。

  • 基本となるのがO型。先端にN-アセチルグルコサミンガラクトースフコース、という単糖を持つ糖鎖が多く存在
  • A型は、O型の糖鎖に、N-アセチルガラクトサミンが結合している
  • B型は、O型の糖鎖に、ガラクトースが結合している
  • AB型は、A型の糖鎖とB型の糖鎖の両方が多く存在

日本人の比率は、O:A:B:AB=30:40:20:10
世界をみると、この比率は様々。

血液型と糖鎖01
出典:B型になりたい私?I LOVE 牡蠣(中ノ三弥子准教授 広島大学 2018/11)

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3.ABO血液型の輸血

赤血球の表面にある糖鎖先端の糖を抗原とよび、血清の中にある糖鎖と反応する物質を抗体とよぶ。
抗原抗体の関係は鍵と鍵穴の関係に例えられる。別エントリー【基礎03】抗体とは~免疫の飛び道具に説明があります。

ABO血液型の特徴は、自分の持っていないABO血液型抗原(A抗原,B抗原)と結合する(攻撃する)抗体を血漿中に持っていること。このため、原則として同じABO血液型間でしか輸血することが出来ない。
たとえば、A型の人は抗B抗体を持っており、B抗原および抗A抗体の存在する血液(B型,AB型,O型)の輸血を受けることは出来ない。
O型の人は抗A抗体と抗B抗体を持っているため、O型の血液(A抗原もB抗原も存在しない)しか輸血を受けることは出来ない。

赤血球表面のA抗原・B抗原と血漿中の抗A抗体・抗B抗体の関係赤血球表面のA抗原・べ抗原と血漿中の抗A抗体・抗B抗体の関係
出典:血液型について教えて下さい(愛知医科大学病院)

生まれたばかりの新生児はABO型抗体を持たず、生後3か月くらいから存在始めるという。
抗体は本来、抗原(敵)が体内に入ってから作られる。しかし、ABO型抗原に対しては、ほかの血液型の血液が体内の入った経験がなくても抗体ができる。なぜかは謎のままだが、一説によると腸内細菌の表面にABO型物質に似た物質があり、その細菌に対抗するために産生されるという説明がある。

大規模災害時や戦争時などの非常時に限り、A抗原・B抗原を持たない(攻撃されない)O型血液は全ての血液型に輸血されることがある。輸血O型血液中の抗A抗体・抗B抗体はすぐに薄められるので。
同じ理由で、抗A抗体・抗B抗体をもたないAB型の人へは、全ての血液型を輸血されることがある。
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4.ABO血液型の糖鎖は、赤血球表面だけでなく上皮細胞表面にも存在

上皮細胞とは皮膚や粘膜などの上皮組織を形成する細胞の総称で、表皮細胞、消化管の粘膜細胞や腺細胞、および肝細胞などの実質臓器の細胞も含む。詳細説明は10項にあります。

同じABO型の糖鎖を粘膜細胞も作って粘液中に放出しているので、唾液や体液を調べれば血液型が分かる。
ただし、上皮細胞表面にABO血液型の糖鎖が存在するのは日本人では約8割の人。その人達のことをABO分泌型と言う。
残りの約2割(2項の図で6+8+4+2=20)の人は上皮細胞表面には存在しないのでABO非分泌型と言う。(ABO非分泌型の人は毛髪、皮膚、爪、脳、神経系、内臓、唾液、体液などに血液型物質を分泌しないか、していてもごく微量のため検出されない)
2項の図のように、非分泌型の人は、上皮細胞中にフコース(赤△)を付ける酵素を持っていないので、それ以上糖鎖が伸びず結果的にABO血液型の糖鎖が上皮細胞上で作れない。フコースが付いた後でないと、A型のN-アセチルガラクトサミンやB型のガラクトースを付けを付けることができない。)
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5.血液型の糖鎖がウイルスや細菌感染の足場となっている

ノロウイルスの例
ノロウイルスは小腸の上皮細胞に感染し腸管上皮細胞で増殖する。ウイルスが人の細胞に感染する時、細胞表面にある決まった糖鎖を見つけて結合し、細胞の中に侵入していく。
ノーウォークウイルス(Norwalk/68株)というタイプのノロウイルスでの研究がある。
ノロウイルスは培養では増やせずヒト以外の動物には感染しない。そのため、感染のしくみを理解するにはボランティアによる実験が大きな役割をになう。2003年にアメリカの研究者らが発表した論文に、次のようなボランティア実験がある。

実験ではノーウォークウイルスというタイプのノロウイルスをボランティアに飲んでもらい、経過を観察した。その結果、
  • 腸の上皮細胞にABO血液型の糖鎖がない、すなわちABO非分泌型の人は全員感染しなかった。
  • ABO分泌型の人のうち、B型の人には感染しなかった。
  • これらの結果、使用したノロウイルスはA型糖鎖O型糖鎖に結合して感染したと推測できる。
(以上は次項③の研究らしい)

ただし、B型の人はノロウイルスにかからないというわけではないという。ノロウイルスにはほかにもたくさんの種類がいて、その中にB型糖鎖を認識して感染するものもいるらしい。そのため、ノロウイルスにかからない血液型というのは存在しないとされる。

糖鎖が感染の足場となっている
ABO血液型の糖鎖が細菌やウイルス感染の足場となっており、病気へのかかりやすさに関係がある、ということが様々な感染症で科学的に示されている。
血液型と関連のある感染症が複数見つかっている。

  • コレラO型がかかりやすく、A型はかかりにくい
  • O型は、A型B型よりも胃粘膜にピロリ菌の受容体が多いため、ヘリコバクター・ピロリに感染しやすい
  • ③血液型抗原がノロウイルス受容体の結合と関連しており、唾液中ではウイルスは効率的にO抗原A抗原に結合するが、B抗原にはあまり結合しない
  • O型マラリアに感染しにくく、重症化もしにくい。ちなみにマラリアを媒介するハマダラカはO型を吸血しやすい

引用元では原著論文へのリンクが付いている。
出典:
血液型と新型コロナとの関係 O型の人は感染しにくく重症化しにくい?(忽那賢志Yahoo個人2020/10/17)

病気へのかかりやすさが血液型によって異なるとすれば血液型のバリエーションは進化にとって有利となる。 A型がかかりやすい病気がはやった場合、そのほかの血液型が生き残る、 B型がかかりやすい病気がはやった場合は、またそのほかの血液型生き残るといった具合に、現在存在する血液型のバリエーションは病原体との戦いの歴史の反映なのかもしれない。

新型コロナでは?

  • SARSに関する2005年の研究で、医療従事者45人のうち、O型はSARSに感染するリスクが低かった。
以下、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検討例
  • ⑥中国の武漢と深センの3つの病院の新型コロナ患者2,173人で、O型は新型コロナに感染するリスクが低く、A型はリスクが高い。
  • ⑦デンマークで、新型コロナ感染者7,422人の内O型は38%で、非感染者2,204,742人(デンマーク人口の38%)のO型42%に対し4%低かった。

コロナ重症化関連の研究例

  • ⑧イタリアとスペインの重症新型コロナ患者1,610人と健康な血液提供者2,205人の遺伝子情報を比較した研究で、重症化に関わる遺伝子が血液型の決定に関与することがありA型は感染すると重症化リスクが45%高く、O型は35%リスクが低かった。
  • ⑨カナダの研究で、入院中の新型コロナ患者95人を検討した結果、血液型と新型コロナの重症度との間に有意な関連があり、A型,AB型は、B型,O型と比較して、人工呼吸器や腎代替療法(血液透析)を必要とする頻度が高く、集中治療室への入室期間が長かった。

以上の研究と異なる、あるいは真逆の研究例

  • ⑩アメリカのボストンで行われた研究で、血液型と新型コロナの重症度とは関係なかった。
  • ⑪ニューヨーク市で行われ研究で、O型の感染リスクは、他のすべての血液型と比較して感染者は少なかったものの、重症者はむしろO型の人が多く、A型,B型,AB型の方が重症者は少なかった。

まだ血液型と新型コロナとの関係については結論は出ていないと考えた方が良さそうです。
血液型が感染リスクや重症化リスクに関連している可能性はありますが、年齢や基礎疾患など、これまでに分かっている重症化リスクよりも影響が大きいものではありませんので、ご自身がO型でないからといって過剰に心配する必要はありません。

引用元では原著論文へのリンクが付いている。
出典:
血液型と新型コロナとの関係 O型の人は感染しにくく重症化しにくい?(忽那賢志Yahoo個人2020/10/17)
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糖鎖のお話から逸れますが
6.ABO型4種の中でも、さらにRH+とRH-がある

「Rh」というのは、アカゲザル:Rhesus monkeyに由来する。1940年、人の赤血球にアカゲザルと共通の血液型抗原(糖鎖ではなくタンパク質)があることを発見し命名した。
Rh抗原は非常に複雑だが、一般には C ・ c ・ D ・ E ・ e などの抗原がよく知られている。その中でも免疫原性が強いD抗原の有無によって、D抗原がある場合をRh+、ない場合をRh-としている。
 RH+=D抗原あり   RH-=D抗原なし
日本人のRh-の頻度は0.5%で、白人の頻度15%に比べると相当低い率。
Rhマイナスの血液の出現率
出典:Rh血液型について(日本赤十字社)

Rh-の人がRh+の血液を輸血された場合、抗D抗体(Rh-の人が持っていないD抗原に対する抗体で輸血副作用や血液型不適合妊娠の原因となる)を作る可能性が非常に高いため、通常Rh-の人にはRh-の血液しか輸血することはできない。逆に、Rh+の人にRh-の血液を輸血することは何ら問題ない。
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ここも糖鎖のお話から逸れますが
7.白血球抗原:HLA:Human Leukocyte Antigen
=主要組織適合抗原:MHC:Major Histocompatibility Complex

赤血球にABO血液型やRh血液型があるように、白血球にもHLA型:Human Leukocyte Antigen(白血球抗原という血液型がある。
HLAは発見当初、白血球のみに存在すると考えられてきたが、その後多くの研究がなされ、白血球抗原としてだけでなく、ヒトの主要組織適合性複合体 MHC:Major Histocompatibility Complexとして、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる膜タンパク質であることもわかっている(ヒトに関しては、HLA = MHC)。

これは自己と非自己を認識する仕組みを司るもので、移植の際に重要な抗原となることがある(拒絶反応)。骨髄移植ではHLA型がよく一致していないと、新しく作られた白血球が患者の臓器を攻撃してしまう。HLAは多様なため、完全な一致は難しいが、差異が許容範囲のHLA型をもつドナーから移植が行われている。
なお、輸血で拒絶反応が起きないのは、赤血球が例外的にHLAを持たないから。
HLA・MHCについては、別エントリー【基礎02】免疫とは~自然免疫、獲得免疫、細胞性免疫、体液性免疫などにあります。
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8.血液型の種類は多い

血液型の種類は、ABO血液型やRh血液型だけでなく、亜型も存在する(A型だけど反応が弱いものや強いものもあってややこしい)。36種類(2017年現在)が知られている。
出典:血液型について教えて下さい(愛知医科大学病院)

(別の説明として)血液型とは、血液内にある血球の抗原(血液型物質)の違いをもとに決めた分類で、抗原は赤血球・血小板・白血球・血漿などに多数存在し、2010年時点で327種類が認定されている。また、血液型の分類方法は300種類ほどが発見されている。
出典:血液型あれこれ(加藤竹彦 国際社会経済研究所 2016/4/15)
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おまけ的なお話
9.血液型性格診断はニセ科学

広まったきっかけの一つが、ベストセラーとなった能見正比古氏の「血液型でわかる相性」(1971年)などの書籍だとされている。その後、テレビなどで血液型と性格の関係が科学的な既成事実のように取り上げられた結果、血液型診断が定着してしまった。現在でも、日本人の6割以上が血液型性格診断を信じているという、調査もある。

血液型と性格の関連については数多くの研究が行われてきて、現在までのところ血液型と性格を結びつける明確な結果は発表されていない。すなわち、血液型性格判断は、もう100パーセント非科学的とも言える。いまでは、放送倫理・番組向上機構の要望により、テレビなどのマスコミで血液型性格診断が肯定的にとりあげられることはまずないが、一度広まってしまったものを否定するというのはなかなか難しいことのようだ。

.おまけ的な勉強
10.上皮組織の分類

“上皮組織”とは、体表面や体腔などの内面を“覆う”役割のある組織であり、保護、吸収、ろ過、分泌などに関わっている。
基底膜といわれるシートに細胞がびっしりとスキマなく並んでいる形態。
それぞれの働きをするにあたり、最も適した組織の形態を取っている。
各上皮組織の特徴
出典:【人体】上皮組織(SGSブログ  2018/6/15)

上皮組織の形態による分類
上皮組織の形態による分類
出典:上皮組織の分類(黒澤一弘 note 2020/3/6)

上皮組織の器官系別による分類
上皮組織の器官系別による分類
出典:上皮組織の器官系別による分類(黒澤一弘 note 2020/5/7)

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11.主に参考にした情報

個別に出典を記載した資料の他は以下の資料。
●血液型の新常識(Newton 別冊)
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12.関連エントリー

血液型は糖鎖の情報、血液型と新型コロナとの関係は?←本エントリーです。
細胞膜の基礎
第3の生命鎖、糖鎖(入口レベル)
[ 2020/10/26(月) ] カテゴリ: 基礎の基礎 | CM(0)
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