ポストさんてん日記

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胸腺腫・胸腺がんについて

[ 2021/01/05 (火) ]
少々必要があって、胸腺腫の勉強をしましたので、ノート的に、まとめておきます。
(ブログ主は医療の素人です)

目次

1.勉強の主目的と理解したこと
2.胸腺とは
3.胸腺上皮から発生する腫瘍の種類
4.発症年齢、罹患率など
5.症状について
6.病理分類、WHO分類と正岡病期
7.術後の経過観察
8.予後:5年無再発生存率
9.メモ

1.勉強の主目的と理解したこと

素人にとって、胸腺腫は悪性腫瘍(がん)なのか?が知りたいところでしたが、まれな疾患とのことで情報が少なく、最初ははっきりせず混乱しました。
詳細は3項に記載しましたが、素人として理解したことは以下のとおりです。

胸腺腫は良性腫瘍ではなく、性格としては悪性腫瘍(がん)と言える。
ただし、胸腺がんとは別もの。胸腺がんは肺がんなどと同じような悪性度が高いがん。一方で、胸腺腫はゆっくり進む大人しいがんであるが、その“大人しさ”は病理分類のタイプによって、良性腫瘍に近いものから胸腺がんに近いものまである。詳細は6項

2.胸腺とは
●出典①:患者さんのための肺がんガイドブック2019年版*
胸腺腫・胸腺がん(国立がん研究センター 希少がんセンター 2020年6月12日更新)
*まれな疾患とのことで情報が少ないなかでは、非常に参考になった本。それでも、180ページのうち胸腺腫・胸腺がんの部分は6ページ。

左右の肺の間で食道や心臓などが収まっているスペースを縦隔じゅうかくと呼び縦隔に発生する腫瘍を「縦隔腫瘍」と呼びます。
縦隔の前方には胸骨があり、その裏側の部分を前縦隔ぜんじゅうかくと呼びます。

胸腺は、縦隔の上(縦隔は範囲が広く、上方を上縦隔と呼ぶ)、かつ前(前縦隔)の方で、胸骨の裏側にあります。
大きさは成長とともに変化します。誕生時には10~15g、思春期には最大の30~40gになります、その後は徐々に小さくなり、成人以後は、脂肪の一部のようにみえます。

胸腺は免疫と関係のある役割を担っています。血液中には免疫を担当する細胞が何種類もありますが、胸腺と関わりがあるのは主にT細胞(胸腺のthymusから”T”が命名されています)です。一般に、骨の中(骨髄)で作られたリンパ球が、成熟したT細胞に変化していく際に重要な役割を果たします。免疫細胞の重要な機能として、自分の細胞を、間違えて外部の細胞と認識して攻撃することがないようにするものがあります(自己寛容と呼ばれます)胸腺T細胞にこの機能を与えます。
この辺りの詳細は別エントリー【基礎02】免疫とは~自然免疫、獲得免疫、細胞性免疫、体液性免疫などにあります。

3.胸腺上皮から発生する腫瘍の種類
●出典①:患者さんのための肺がんガイドブック2019年版
胸腺腫・胸腺がん(国立がん研究センター 希少がんセンター 2020年6月12日更新)

その病理組織の特徴から3つに分類されます。
  • 胸腺腫
    細胞は分裂・増加しますが悪性腫瘍(がん)に分類されません。しかし、進行すれば周囲にひろがり(浸潤)、胸膜・心膜に散らばる(播種)ことがあり、がんのようなふるまいをする場合があります。出典①
    確認した情報の中では、多くが、『悪性腫瘍(がん)かどうか?はっきりした言及がない』ものが多かったです。
    ただし、どの資料にも、進行すれば浸潤播種はある、と書いていますので、良性腫瘍ではないと理解しました。

    (見つけていないだけかも知れませんが)唯一、この出典①に『胸腺腫は悪性腫瘍(がん)ではない』との記載がありました。
    一方、『胸腺腫は悪性腫瘍(がん)』と言い切っている文献・説明も少しありました。例えば、少し古いですが、PDF胸腺腫に魅せられて(奥村明之進 日本癌病態治療研究会 和文誌(W’Waves) Vol. 14 No. 1 2008)では、
    悪性腫瘍の一種ではあるが、肺がんほどの悪性度を有さず、、、
    胸腺腫という用語における臨床医と基礎医学研究者の間での多少の混乱がある。また、胸腺腫は一般に比較的悪性度が低いものが多いので、一部の内科医には良性腫瘍と理解されて経過観察されている場合もあり、外科医との間で認識の違いも認められる。』
  • 胸腺がん
    以前は胸腺腫として取り扱っていた病気です。この中で悪性度の高い一群を一つの病気の単位と考え、胸腺がんと呼んでいます。胸腺腫と胸腺がんの基礎知識(東京慈恵会医科大学附属柏病院)
    細胞に異型が認められる悪性腫瘍であり、組織型としては扁平上皮がんが多く、進行すれば周囲への浸潤やリンパ節や他臓器へ転移します。出典①
  • 胸腺神経内分泌腫瘍

胸腺腫か?胸腺がんか?他の疾患か?の診断は、手術を行って初めて確定できます。つまり、手術で切除した胸腺の腫瘍全体を顕微鏡的に検査(病理検査)して、その結果、はじめて確定診断ができるのです。診断前の診断名としては、縱隔腫瘍あるいは前縱隔腫瘍といいます。

4.発症年齢、罹患率など
胸腺腫・胸腺がん(国立がん研究センター 希少がんセンター 2020年6月12日更新)

胸腺腫・胸腺がんは30歳以上(とくに40~70歳)に発症します。男女差はありません。胸腺腫は人口10万人あたり0.44~0.68人が罹患すると言われており、まれな疾患です。胸腺がんはさらにまれで稀少がんに相当します。

5.症状について
胸腺腫・胸腺がん(国立がん研究センター 希少がんセンター 2020年6月12日更新)

胸腺腫・胸腺がんは周囲の組織に直接影響を与えるほど大きくならない限りは無症状です。50%の患者さんで症状がない状況で見つかるとも言われています。一般的には、無症状の患者さんは良性、有症状の患者では悪性のことが多いのですが、例外も多いことには気をつける必要があります。
悪性の場合には症状が出やすいのは、腫瘍が周りの臓器に入り込む(浸潤)しやすいからです。良性の場合は押し込む(圧迫)事がない限りは症状がでません。具体的には、咳、胸痛、呼吸困難などがあります。また血液の流れを止めるような部分にできてときには、狭窄症状が出現します。
その他、腫瘍が出している物質によって症状が出ることがあります(腫瘍随伴症候群と呼びます)。重症筋無力症、低ガンマグロブリン血症、多発筋炎などがあり、これらの症状から見つかることもしばしばあります(その場合は悪性度とは関係ありません)。

6.病理分類、WHO分類と正岡病期

WHO分類
typeA
紡錘形/卵円型の細胞で、核異型を認めない
紡錘形ないし卵円形腫瘍細胞から構成され、リンパ球は少ない。胸腺腫の中では、最も悪性度が低い。
typeAB
AとBの混合型
リンパ球が少なく紡錘形ないし卵円形腫瘍細胞のtype A領域と、リンパ球に富み小型の多角形ないし卵円形腫瘍細胞のtype B領域が二相性に混在する。
typeB1
密なリンパ球浸潤を伴う
正常胸腺皮質のように未熟なリンパ球が密に存在し、腫瘍上皮細胞はまばらである。髄質様構造をとる部分もある。
typeB2
腫瘍上皮に明瞭な核小体が認められる
やや大型の多角形腫瘍細胞とtype B1よりやや少ないが多くの未熟なリンパ球から構成される。
typeB3
多角形の上皮がシート状に配列し、リンパ球の浸潤は少ない
わずかな異型性を伴う中型の円形なし多角形腫瘍細胞と、少なめの未熟リンパ球から構成される。胸腺腫の中では最も悪性度が高く、播種や隣接臓器浸潤を伴うこともある
typeC胸腺がん
左の説明:胸腺腫・胸腺がん(国立がん研究センター 希少がんセンター 2020年6月12日更新)
右の説明:胸腺の医学(日本胸腺研究会)

上記のWHO分類で、typeA~typeB3が胸腺腫の病理診断によるタイプになる。
ほぼ良性といえるおとなしい腫瘍から、胸腺がんへの移行型のような高悪性度の腫瘍まで含まれている。
type A、AB、B1では腫瘍死がほとんど無く、きわめて良性的な経過であるが、type B2、B3の順で予後不良となる。
出典:PDF胸腺腫に魅せられて(奥村明之進 日本癌病態治療研究会 和文誌(W’Waves) Vol. 14 No. 1 2008)

正岡病期
Stage Ⅰ肉眼的・組織学的にも被包化されている
Stage Ⅱ(A)顕微鏡的に被膜浸潤が認められる
(B)肉眼的に周囲の脂肪組織もしくは被膜に浸潤・癒着
Stage Ⅲ肉眼的に心膜、大血管、肺に浸潤
Stage Ⅳ(A)胸膜・心膜播種
(B)リンパ行性・血行性転移


7.術後の経過観察
●出典:第3部.胸腺腫瘍診療ガイドライン 2018年版(日本肺癌学会)

CQ23.胸腺上皮性腫瘍に対し根治的治療が行われた場合,定期的な経過観察は行うべきか?
推奨
 胸腺腫の場合10年以上,胸腺癌の場合5年以上の経過観察を行うよう提案する。
ブログ主(注):胸腺腫が10年以上となっているのは、胸腺腫のゆっくり進む(slow growing)性質のためかと。

8.予後:5年無再発生存率
胸腺の医学(日本胸腺研究会)

日本の胸腺腫データベース解析の結果から、5年無再発生存率は、正岡病期で、
  • Stage I:98%、
  • Stage II:95%、
  • Stage III:67%、
  • Stage Ⅳa:38%、
  • Stage IVb:48%

9.メモ

【がん電話相談から】胸腺腫術後、化学療法の副作用がつらい(産経ニュース 2020/12/29)
【がん電話相談から】胸腺腫を切除したが、今後が不安(産経ニュース 2019/11/5)
[ 2021/01/05(火) ] カテゴリ: がんに関する事 | CM(0)
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