発電一般や地熱発電について2つの正論があった。もっともだと思う。
①素人が発電方法を考える必要はない。必要なのは、国が金を出さないこと(税金を投入しないこと)。国がやるべきことは発電会社に公害発生をさせず、徹底的な安全対策をさせること。それが守られなかったときの罰則を厳格に与えること。いかに安全で、安く、環境負荷の小さな発電をするかは、発電会社が考えればいいこと。彼らは「本当のこと」を知っているのだから、安全・コスト・環境負荷のバランスにおいて、その時代・状況にいちばん合った発電方式が自然に定着する。
(出典:阿武隈(原発30km圏内生活)裏日記06/15のエントリー
諸悪の根源は税金である)
②地熱発電は当然に短所もあります。地熱発電がメリットばかりであれば、もっと広い範囲で利用されているでしょう。
上記の正論も頭に置きつつ、地熱発電について少し調べて見た。なかなか奥が深く
面白そうである。今後、情報を集めて行きたい。(好奇心のおもむくままに、である

)
(通常のまとめ方と異なり、)まずは、地熱発電の
問題点・デメリット集めからスタートする(現時点では
プラスイメージを持っているのだが)。
なかには、解決済みの事や、地熱発電の方式によっては問題とならない事もあるらしいが、とりあえず、固有のファクターは考えずに、羅列してみた。
(いくらなんでも、唐突すぎるスタートだ、一般知識が先とお思いの方には、以下の一読をお勧めします。
日経BP7月12日
猪瀬直樹:菅さん、地熱発電の特徴と仕組み教えます。)
1.経済性の問題(ここは、事業者がリスク評価してダメならやらなければ良いので、今後、あまり深入りしないつもり)
(1) 開発コストが高い=開発リスクが高い 地下熱源調査から地熱発電所の運転開始までの期間が長く(長い場合だと15~20年)、探査・開発に多大な費用がかかる。
さらに開発のために探査したとしても、発電ができない場合もある。
結果的に自然災害への遭遇を配慮して断念する場合も。
(2) 建設コストが高い。 中でも、井戸の堀削するための費用が地熱発電の開発コストの中で、割合が高い。
他の国と比べても日本の地熱発電の堀削費用は群を抜いており、2倍になっている。
(3) 減衰する。 その地点毎に水量が限られているのでいつか枯渇する。地熱発電を続ける限り、次々に新しい坑井を掘削し続けていくのが避けられない。
温水が減少して、さらに深く井戸を掘る必要性が出てくる場合がある。
(4) エネルギー効率が低い 1カ所で開発できる発電規模が小さく、大規模な発電所を作りにくい(通常は1万~5万キロワット)。これは発電単価を上げてしまう要因である。
地熱発電によるエネルギーは、低品位エネルギーであり発電効率が悪い。
出力変化が難しい。
(5) 設備の問題 蒸気の成分でタービンの傷みが早い。発電システムへのスケール付着
2.規制が多く開発が困難。 地熱の存在する地域の82%は国立公園内にあるため、現在の法律では開発ができない
新エネルギーの枠外に置かれていたため、援助金がもらえない。
3.熱水の汲み上げにより、温泉の減少または枯渇や泥水の温泉への混入が懸念される (1) 日本の例 ①日本最初の国立公園区域内にある霧島地方では,大霧発電所で1万kWと小規模ながら1996年3月より地熱発電が行われている。この地点より4km離れたえびの高原では5年ほど前から極端に噴気が減少し,自然湧出の温泉が枯渇していると報告されている。
②秋田県大沼地熱発電所:付近の上トロコ温泉枯渇
③大分県久重町大岳地熱発電所,八丁原発電所:25箇所の温泉・地獄すべての自然湧出の源泉に湧出量低下、泉温低下(うち,枯渇5)
④秋田県澄川地熱発電所:周辺で大規模な土砂崩壊がおきて澄川温泉と赤川温泉が壊滅
(2) 外国の例 ①イタリアのラルデレロ地熱発電所:周辺の温泉源のみならず、周辺の森林が壊滅
②フィリピンのフィイ地熱発電所:水蒸気爆発で周辺の温泉が壊滅
③米国ネバダ州の地熱発電所:調査井のボーリングで世界的に有名な間欠泉が噴湯停止
(3) 影響に対する補償 これまでの例では、地熱発電との因果関係が明確とされる枯渇した温泉に対して,発電事業者が熱交換によって得られた温熱水を供給するなどの補償を行っている。これは最小限の補償として当然視されている。しかし、これは、その温泉を含む地域全体が被る被害を考えれば全く不十分な補償である。自然の温泉を破壊するという行為がその程度のことで償われるはずはない。
(4) 反論の紹介(8/14追記)
【資源エネルギー庁が2008年に設置した「地熱発電に関する研究会」によると、国内の地熱発電所が温泉に悪影響を及ぼした例はない。しかし、温泉の枯渇を懸念する事業者らの反発を受けて頓挫した開発事業もあったため、温泉業界との協調も普及のカギだ。】
(関連情報)
地熱発電所の周辺温泉への影響について 2009/8/5 野田徹郎(産業技術総合研究所)
【追記】温泉事業者などから寄せられた疑問への回答(安達委員提出資料)
前半PDF、
後半PDF(これらは、
第3回温泉資源保護に関するガイドライン(地熱発電関係)検討会 2014/12/8 の資料)
4.環境に与える悪影響 問題を引き起こす要因は、主として以下の3つである。
①熱水の汲み上げ。 ②熱水・蒸気に含まれる毒性物質 一般に深い地層から得られる熱水には、(一般の温泉に用いられる水と異なり)毒性を持つ砒素・水銀が含まれている場合が多い。また主に水蒸気中に硫化水素などが含まれていることも多い。
③不用水の還元 通常の場合、地熱発電に利用された後の不用水の大半は、毒性のある物質を分離できないために、熱交換後に地下に還元される。これは同じ場所に戻されるわけではなく、汲み上げ箇所より浅い地層に戻されるのが一般的である。そこで,その戻された部分で影響を生じうる。さらに、大量の不用熱水を岩の割れ目に注入することから、地層の構造の変化を引き起こす危険性がある。
| | ①熱水の汲み上げ | ②熱水,蒸気に 含まれる毒性物質 | ③不用水の還元 |
a | 地盤沈下 | ● | - | - |
b | 地震誘発*1、崖崩れ | ● | - | ● |
c | 大気汚染 | - | ● | - |
d | 気化性物質・固形物質による表層土の土壌汚染 | - | ● | - |
e | 植物の損傷 | - | ● | - |
f | 土砂流出による河川水の汚染*2 | - | ● | - |
j | 地下水の汚染 | - | - | ● |
*1通常は高感度な地震計でしか感知できないような無感地震である。なお、大規模な地震を誘発させた例はない。
参考までにこんな記事も。
原発より強かった 東北地方の地熱発電所 *2初期の地熱発電では,不用水をそのまま河川に放流した。そのために近隣や下流域に砒素等による汚染をもたらし,魚が死滅するなどの被害をもたらした。
5.景観の問題 構造物自体の違和感、冷却塔からの排気による白煙などが、山中に建てられた工場のイメージとして捉えられ、自然の景観を損ねるものとして嫌悪されるようになってきている。
6.建設工事のボ-リング作業に伴う騒音・振動、噴気の騒音 建設期間が長いので問題になる
7.操業に伴う噴気の騒音 近づくと会話が出来ないぐらいうるさい。
8.地熱水の温泉利用の可否 発電後のいくらか冷却された不用水を温泉に直接利用するための研究開発も試みられているが、万一の毒性発現の危険防止対策を含む採算性を考えると、多難な障害が予想される。
実例として、アイスランドにあるスヴァルスエインギ(スバルトセンギ)地熱発電所では、発電用に汲み上げた地熱海水を利用して、世界最大の露天温泉ブルーラグーンが運営されている。
【関連エントリー(新しい順)】
●地熱発電とは(基本的なこと~現状) ●地熱発電の問題点・デメリット(いきなりですが)
→本エントリーです(個人的メモ)
★地熱情報研究所 Q&A●自然由来重金属等による地下水・土壌汚染問題の本質:ヒ素
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