勉強のために、
捕鯨問題と国際法PDF(児矢野マリ 国際常民文化研究機構・神奈川大学日本常民文化研究所 2010/12/10)の全文引用。
はじめに
捕鯨は、長い歴史と多様な文化に支えられた人類の営みである。そして今日では、鯨類という海産哺乳動物の捕獲活動として、海洋生物資源の利用と保全に関する国際法に服している。けれども現在、捕鯨をめぐる状況は錯綜している。そして、捕鯨問題は、生物資源の国際管理に内在する重要な論点を提起している。資源の持続可能な利用、持続可能な漁業の問題、さらには、対象となる生物資源をいかにとらえるかという、自然観を含む価値の問題にも関わる。
そこで本稿では、国際法の観点から捕鯨問題の現状と課題を整理し、国際社会における漁業の将来について考えるヒントを提供したい。以下では、まず捕鯨・鯨類に関する国際法の基本的枠組を整理し、次に国際捕鯨取締条約の規律について、国際捕鯨取締委員会(IWC) の活動の展開にも言及しつつ、説明する。そして、今日の捕鯨論争を法的観点から分析し、国際法上の評価を行う。最後に、それまでの議論を前提に政策論の観点から、正当かつ実効的な国際管理制度の再構築に向けた取組について展望する。
1 捕鯨・鯨類に関する国際法の枠組