(前略)
この2年間程度は、ICRP(国際放射線防護委員会)の言う非常事態だ、という認識を持つことは不可能なのでしょうか。例えば、2年間であれば、1mSv/年と5mSv/年が本当に違うのでしょうか。むしろ、このコミュニケーションが必要だと思いました。
(中略)
元長崎大学の山下俊一氏が福島県の放射線アドバイザーであったときに、「福島県は安全だ」と述べたとして、福島大学の教員有志からを始めとして、県に対し山下氏の解任要求が多数なされました。山下氏は、チェルノブイリでの状況をつぶさに観察してきた経験から、「本当の問題は、別のところにある。それは、精神的うつ状態になることだ。チェルノブイリではそれが現在でも続いている」、という主張をしたのではないかと思います。
ということで、Q&Aに行きます。
質問:ICRPを信用することは難しいです。なぜならば、学者の意見が一致しておらず、ICRPの基準は甘すぎるという人がいるからです。どうして、ICRPを信じることができるのですか。
回答:私自身、ICRPの主張の根幹をなすLNT仮説(後述)は、放射線のリスクを正確に伝達する際には障害になると考えております。
LNT仮説は、リスクを過小に評価しないための仮説で、言い換えれば、リスクを意図的に過大に評価するための仮説です。
「放射線の防護、すなわち、平常時における管理のためには、放射線リスクの過小評価をしてはいけない」というICRPの立場は十分理解しているつもりですが、「ICRPの勧告では、平常時に関する勧告を現時点の福島県のような状態でも守るべきだと考え、不安を抱く人が多くなりすぎる」、と考えていたからです。
無用に不安をいだけば、その人も、その周辺の人も不幸になります。リスク評価は、そもそも人々が幸福になるために行うことです。リスクコミュニケーションは、その目的のために行うことです。
ICRPの平常時に関する勧告は、基本的に過大評価であり過ぎるために、これを元にリスクコミュニケーションを行うと、どうしても、人々を不幸にしてしまうように思えるのです。
一方、ICRPの非常事態に対する勧告は、リスク評価そのもの伝達しようとしているように思えます。しかし、受け入れる人が少ないという問題があります。
いずれにしても、なぜICRPの非常事態の勧告を信じるのか。この質問にお答えするには、かなり長い説明が必要になります。以下、いくつかの項目に分けて、説明をしたいと思います。
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管理人:icchou
非常勤講師